約 331,393 件
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/188.html
項目 読み 意味 大ミサイル/大ミサ/大ミソ だいみさいる/だいみさ/だいみそ メインウェポン『“ハルバード”大型ミサイル』のこと。時々、『“カッツバルゲル”中型ミサイル』を指して大ミサイルと言う人もいるが、これは『“ハルバード”大型ミサイル』がミサイル3種のうち唯一のメインウェポンであり、どちらかというと趣味装備に分類されるが故にあまり使用される機会のない影の薄さからくる誤解である。 ダイヤ だいや CSC『ダイヤモンド』の略称およびそれを使用された神姫の総称。多大なマイナス補正の可能性と引き換えにレベル上限を大きく引き上げる効果があり、成長限界がLv200~300台となる。→330かつてはCSCの中でもトップクラスの入手難度で殆ど見かけることは無く、初開催イベント「イリーガル・レプリカ迎撃指令」では高レベルターゲット相手に多くのオーナーが苦戦を強いられていたが、イベント終了後の報酬や、CSC交換の実装により入手が容易になったことで育成するオーナーが増えた。このため、S・EXクラスではダイヤとそうでない神姫とで、レベル差マッチを強いられる可能性がある。 宝島 たからじま イベントミッション「ドッキドキ・トレジャーアイランド」および、その中のステージ。SF'08のイベントとして初登場した。また、2009.2.26から常設のミッションとして再登場し、育成やアイテム収集の場として親しまれた。その後、2009.6.18からの期間限定ミッション「極秘ファイルを入手せよ!」を経て、2009.6.29に消滅した。 ダクスラ だくすら スキル『ダークスラッシャー』(DS)のこと。 盾 たて 片腕に装備するアセンブル装備のこと。以前はFATE盾のことを指していた。「AB盾」「花盾」など、「盾」の前に「シールド以外の単語(を略したり訳した単語)」を付けて呼ばれる。一方で「半減盾」という付属スキルそのままの呼び方、「まな板」「カルテ」という「盾」のつかない呼び方もある。 盾型 たてがた 全身盾まみれだったりムカデのようにFATE盾をつなげているような神姫のこと。現在では他の武装パーツの性能の向上とともにFATE盾を複数つける意味が薄くなり、全くと言っていいほど見かけない。装備の方向性からマタンゴがこれの後継・派生に近い。 狸 たぬき 1.砲台型フォートブラッグのこと。特にアクセリー『まるみみ』と『しましまテイル』を装備しているもの。その浅黒系の肌とたれ目がちな外見から、もっともそれらのアクセサリが似合うとされている。2.「リス型」ポモックのこと。茶と白のカラーリングや丸っこい顔が、すごく…狸です…。 種子 たねこ 種型ジュビジーのこと。(しゅしとは読まない) ダンボール だんぼーる そのままずばり、アーマー『ダンボールアーマー』シリーズのこと。拘りあるダンボールの質感と、防御1のステータスを共通して持つ。2周年感謝祭(2009年4月)に「胸」が登場、シリーズ化を予感させる表記に期待が寄せられた。その後、「極秘ファイルを入手せよ!」(2009年6月)に「腕」、3周年感謝祭(2010年4月)に「脚」、2010年7月に「腰」が登場。今後の更なるシリーズ化はあるのだろうか。マジックで書いたような「MMS」の文字の元ネタは、外国人のガン○ムのコスプレ(参照元)。 ヂェリカン ぢぇりかん バトルロンド上ではメインウェポンに分類される『ヂェリカン』各種のこと。「ジェリカン」ではない。神姫用添加剤「ヂェリー」を封入したボトルで、直接神姫の口から摂取することで効果を発揮する。詳細はアークとイーダのデザイナーであるCHOCO氏のホームページの2008年2月9日の日記を参照。 チゲ ちげ メインウェポン『GA4“チーグル”アームパーツ』のこと。 ちなみに「建機型神姫」は神姫ショップで買えるからなよろしく頼むぜ! ちなみにけんきがたしんきはしんきしょっぷでかえるからなよろしくたのむぜ! SF'09にて、8/18のメンテから解体屋を始めたジャーナルの一員のリョーコが、店を出る際にかけてくるセリフ。2周年感謝祭以降、レア神姫っぷりをいじられ続けているのを気にしているのか(本編では気づいていない様子だが)、あまりにも唐突かつ悲壮感の漂うセリフだったので、瞬く間に紳士淑女の間に広まっていき、このままテンプレに定着しそうな勢いである。ちなみに「建機型神姫」は神姫ショップ以外でも買えるからな、よろしく頼むぜ! 茶室 ちゃしつ ティールームのこと。 中ミサイル/中ミサ/中ミソ ちゅうみさいる/ちゅうみさ/ちゅうみそ サブウェポン『“カッツバルゲル”中型ミサイル』のこと。 調教 ちょうきょう 神姫育成で重要なことの一つ。AIの育成のためにミッションを利用して教育すること。道場や、AI変え、AS調教などを指す。 蝶子 ちょうこ 蝶型シュメッターリングのこと。 超白子砲 ちょうしろこほう スキル『ハイパーブラスト』のこと。Hyper(超)な白子砲のスキルだから超白子砲。 ちょっとコンビニ行って来る ちょっとこんびにいってくる 武装紳士がこの呪文を唱えると、財布の中身がなぜか未使用のウェブマネーになる。いくつかあるランクのうち高ランクのものを乱発すると神姫破産の引き金になる。ご利用は計画的に。 ツインビー ついんびー メインウェポン『ツインビームガン』のこと。見た目がそのまんま。ウィンターフェスタで姉妹品?『ウインビームガン』が登場。グローバルアチーブメントは達成できなかったが、GEM交換で入手可能になった。ゲーム中のツインビー ウィンビーと同様、2つそろうと合体攻撃を使うことが出来る。ちなみに横に並べて発射するため、ファイヤー攻撃と思われる。(縦に並べるとスター攻撃) 杖 つえ メインウェポン『マジカルステッキ』のこと。 杖子 つえこ 杖を主力武装にした攻撃特化型神姫のこと。杖の必中効果を利用した、高攻撃低命中のステータスが特徴。杖だけで戦うのが理想の杖子という見方もあるが、実際には相手に応じて素手などを副兵装として戦うタイプも多い。 杖ミソ つえみそ 必中効果を持つ杖をトリガーに、追撃スキルでミサイルを打ち込む戦い方。遠距離回避型には頭の痛い戦法だったが、必中効果の武器に追撃不可の制限が加わったので成立しなくなった。なお、コメットコリジョン(付属の攻撃スキル)からは追撃可能。 ツガル つがる 第3弾(EXウェポンセット)神姫、サンタ型MMSツガル。漢字で津軽と呼ばれることが多い。リペイントモデルもそのまま青津軽と呼ばれる。ツガルは元々ビートマニアの同名キャラクターを神姫化したもの。 角 つの アクセサリー『ユニホーン』のこと。 角銃/角ライフル つのじゅう/つのらいふる ツガルのメインウェポン『ホーンスナイパーライフル』の事。更に略されて「角」とだけ言われる場合も。角との区別は前後の文で判断を。 爪 つめ メインウェポン『研爪「ヤンチャオ」』のこと。 釣堀 つりぼり バトルロンド一周年記念キャンペーン時の魚拓ランキングのためにティールームで開かれた釣り(スキル『キャッチアンドリリース』)のためのテーブルのこと。大物を釣るためにはディープシーかボルケーノがいいということで期間中は大勢の人が集まった。アチーブメントの達成のために大物を釣る必要があるので、いまでもたまに開かれている。バトルルールをSP消費半分、近距離攻撃禁止、打撃武器禁止、COOLに勝利にすると、より効率的に釣堀を運営できる。 ティグリース てぃぐりーす 第6弾神姫、寅型MMSティグリース。寅子の愛称で呼ばれる。名前の由来はラテン語で「虎」の意味。丑子が食べられる側ならこちらは食べる側。 ディゾナンス/ディゾ でぃぞなんす/でぃぞ コーディネートが異なる武装を3種以上装備している状態のこと。能力値にペナルティが課される。不協和音、の意。この状態の神姫を「ディゾってる」とか「ディゾらせた」などと言う。 デッキ でっき 「武装セット」の別称。非公式用語。英表記では"Deck"となるため「デック」でも間違いではないが、あまり使われていない。カードゲーム用語では、ゲームをプレイできる状態に調整されたカードの一束(山札)を指す。あまりメジャーではないが、同義語には「アセンブル(アセン)」がある。同じカードゲーム由来の用語には「メタ」がある。 デモクロ でもくろ スキル『デモニッシュクロー』の略。 テュアロア てゅあろあ スキル『ガルガンテュアロア』のこと。武器名(『ソード・オブ・ガルガンテュア』→ガルガン)と区別するために、稀にこう呼ばれることがある。なお正しい区切りは「ガルガンテュア・ロア(ガルガンテュアの咆哮)」と思われる。 天使型あーんばるがいいと思うわ てんしがたあーんばるがいいとおもうわ かつて公式サイトで配信された「武装神姫RADIO RONDO」内での天使型あーんばるの中の人扮する阿澄先生による名台詞。(第14回の24分48秒辺り)「あーんばるがいいとおもうわ、天使型あーんばるがいいと思うわ!」と繰り返して強調して使う。どの神姫を選べばいいか迷っている人達の所に一押しをすべく現れる。あすみん先生自重してください。 道場 どうじょう AIを育成するために行うミッションバトルのこと。主にミッション『技能試験/ClassC1』(俗称、パシュミナ道場)のことを指す。道場でAIを育成することを「道場に通う」とも言う。また、SF'09ではベガ道場が開設され、期間中はハンコを求めて多くのオーナーが足繁く通った。 特化 とっか/とくか 特定の能力だけを異常に成長させた神姫のこと。相性の良い武装やBMが無ければ実戦での運用が難しい。また、それでも最低限必要なバランスを取らなければ貧弱。例として攻撃に特化した『杖子』や、SPの特化型が実用度が高い。 ドラクラ どらくら スキル『ドラゴンクラッシャー』の略。スレの流れを切るときにも使用される。使用例は「話の流れをドラゴンクラッシャー」など。 寅子 とらこ 寅型ティグリースのこと。丑型ウィトゥルースと合わせて丑寅=鬼門を指すため、「虎」とは呼ばない。 トランプ とらんぷ メインウェポン『エーススラッシャー』のこと。スキルもズバリ『エースのフォーカード』。 トリガー とりがー 特殊な条件下でのみ発動するスキルの引き金(トリガー)とするための武装。基本として反撃スキル用の「反撃トリガー」と追加攻撃スキル用の「追撃トリガー」の2つ。前者は準備が短く硬直の長い武器、後者は命中が高くHit数の多い武器がよく選ばれる。 鳥子 とりこ セイレーン型エウクランテのこと。鳥子本人は「鳥じゃなくてセイレーン型!」と否定する。 ドリドリ どりどり スキル『ふぁいなるドリドリあたっく』のこと。武装神姫2036のあの技を使わせろ!という猫子好き紳士たちの願いにより実装された。遠距離攻撃のため、『スーパーねこパンチ』を発動してしまい、泣きを見る紳士が多い。 ドリル どりる メインウェポン『旋牙「シャンヤ」』のこと。 弗子 どるこ イルカ型ヴァッフェドルフィンのこと。 上へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2688.html
※※※ 「メリー殿!!」と、アッシュが先陣を切ってフロアに一歩足を踏み入れた瞬間、さっきまでの俺の期待は実にあっけなく崩れ去った。 フロアは、魔境と化していた。 「メリー! メリー! ジーク・メリー!」 大型のバトル筐体を中心にして、フロアは討ち取られた神姫と、墓のように床に突き立てられた武器であふれかえっており、さながら戦国時代の合戦がごとき様相を呈している。いや、スケールが小さいながらも近代兵器を模した装備を持つ神姫が戦っているのだから、それ以上の惨状かもしれない。 そして、ステージ内の小高い丘になった部分に、メリーとその他の神姫が大軍勢で居座っているのだ。しかも、どっから拝借したのか、メリーは神姫たちによって玉座のついた神輿に担がれて聖帝よろしく頬杖をついている。横にはさっきのイーダがいて、あれこれかしづいていた。 その場で頭を抱えたい気分だったが、メルが何かに気づいて短く声を上げた。 「エル姉っ!」 視線の先には、一体のアルトレーネが、メリーの隣で十字架にかけられていたのだ。しかもさらに隣には、 「クレア殿までも……」クレアまでもが同じ目にあっていた。両腕を縛り付けられ、体は煤だらけ。良くない扱いを受けたであろうことは、容易に推測できた。 「むう、よもやクレア殿までも手にかけるとは、完全に賊に成り下がってしまったようですね」 「もう我慢ならない! 行くよ!」 二体の神姫が物陰から飛び出す。俺は後ろからアッシュに合図を出して、その場に残った。 後方からアッシュたちの様子を確認する。 「メリー殿!!」 「エル姉!!」 アッシュが接近すると、メリーを含めた神姫たちが反応した。 「うう……。あっ、アッシュ先生!」 「メル……? メルなのですか? ダメですっ、こっちに来ちゃダメ!!」 「おやおやぁ、誰かと思えば、まだこんなところにネズミが残っていましたか。人間たちに味方する反乱分子が。どうですか、感動のご対面ですよ」 「今や反乱分子は貴女たちですよ、メリー殿。わたくしたちの本分をお忘れですか」 「そうだよっ! なんにも罪のない神姫に酷いことして、革命とか変革とか言うくせにそっちこそ悪者だよ!」 アッシュとメルが叫ぶ。だがメリーは取り合わない。足を組み、見下すような視線で玉座にふんぞり返っている。 「ハア、頭の固い人たちです。恵まれた神姫が私たちにどんな発言をしたか、忘れたんですか? やれ小さくても可愛いだの、ダッシュすると揺れて痛いだの言いたい放題の上から目線。あげくゲームの主人公までアヤシイ雑誌を所持してるわで、ここを制圧したら公式に殴り込みをかけたい気分ですよ」 メリーはかぶりを振った。もはやバストの大きい神姫に対する憎悪に完全に染まってしまったようだ。十字架にかけられたクレアが、そんな変わり果ててしまった親友に対する悲しみを押えきれない様子で、叫んだ。 「メリーさん、もうやめてください! そんなに胸が小さいのが気になるなら、胸部増量パーツを付ければいいじゃないですか!!」 ……おいおいクレアよ。そりゃどこのアントワネットだ。 「だぁ~かぁ~らぁ~、それが上から目線の発言だって言ってるんですよッ!!」 当然この発言がメリーたちの逆鱗に触れたようで、メリーの周りの神姫たちが手の付いた棒やらマジックハンドやらを持ってクレアの足元に群がった。 「あっ……やっ! んんっ、くすぐった……いたたたっ、引っ張らないでくださいぃ~~」 「これか! このふくらみが悪いのか!」 「……ねえ弧域、なんで前かがみになってんの」 「え? ハッハッハ、なんのことだいコタマ? ……いや姫乃、違うんだ冗談だって。ああ、竹さんまでそんな目で俺を見ないでくれよ」 ―――ああ、男というのは実に悲しい生き物だ。背比さんも、その横で同じポーズをとる俺のどアホウな悪友も、みな同じ男なのだなぁとしみじみ思った。 ひとしきりクレアの局所をつつき回した後、改めてメリーが玉座に戻り、尊大な態度で言った。 「まったく、そちらがそのような態度をとる以上、もはや譲歩の余地はありませんね」最初からそのつもりはなかったんだろうが、それでもこっちが相手の心情を害したという口実を与えてしまった。これはまずい。 「ですが私は寛大な神姫です。もしそちらがこれ以上の交渉を続けたいとお考えならば……そうですね、島津 輝の身柄を引き渡すことを要求します」 「俺!?」思わず俺は物陰から身を乗り出してしまう。気づいたメリーが不敵に笑った。 「あらあら、いたなら最初から姿を現せばよかったのに。なにかの作戦でも立てていたんですか? 怖い人です」 「……メリー、もうよせ。ここにいる人たち全員が迷惑してんだ」 「フフ、アハハハハッ!! 迷惑だなんて、なにを今更いけしゃあしゃあと。もとはと言えばあなたのせいですよ。さんざん私たちを傷つけておきながら」 メリーは玉座から立ち上がると、堂々とふんぞり返った。そんなことをしてもバストは……いや、なんでもない。 「そこのあなたたち、彼を連れてきなさい」彼……? と俺が考えている間に、神姫たちがロープでがんじがらめにしたそいつを引っ立ててきた。 「痛い、痛いって。そんなに引っ張らないで」 なっ、 「健五か!?」 「あ、輝さん!? なにやってるの、メリーたちを止めてよ!」 こいつは驚いた。なんと健五まで捕えられていたのだ。人間まで人質にしてしまうとは、奴らもいよいよ本気らしい。 「さてアキラさん。健五さんの身柄を返して欲しければ、私たちの要求を飲んでいただきましょう」 「……内容は?」 「それはぁ~」メリーは急にくねくね体を動かすと、俺にめがけてウインクしてみせた。 「私をアキラさんの伴侶と認めて~、人間ではなくひたすら神姫に愛を捧げる一生を送って頂くことですよぅ」 ……。 「それが嫌なら、メイクまで完璧にこなした健五さんの女装写真をマニア向けショップに大量に売りつけることになりますけど」 「輝さんが結婚する方向で!!」 「健五が女装する方向で!!」 …………。 「テメー助けに来てやったのになんだその態度は!!」 「いいでしょ、責任とるにはいい方法だよっ。きっとお似合いのカップルだよ!!」 「嫌すぎるわ!! テメーこそ写真なんざたった一回なんだから大人しく撮られやがれ!!」 そんな一生はゲームの中で、しかも対戦相手の言動を眺めているだけで充分だっ。俺には考えられん。だが、前方でアッシュ、メル、コタマが意味ありげにでっかいため息をついた。 「……輝殿」 「へ?」 「ここはメリー殿と結婚するしかありません」 「は!?」 「うん、そうだね……。島津さんのおかげで、みんなが救われるなら……」 「安心しなよ。アンタのことは忘れないからさ……」 ―――なんだこの空気は。いつしか、俺の周りで人も神姫も仲良くコールを始めやがったし。 「「「「「「「けーっこん!! けーっこん!! ひゅーひゅーっ!」」」」」」」 「うるせええぇぇ!! お前ら厄介ごとを俺に押し付けてーだけじゃねえか!!」 「ならば交渉は決裂です。みなさん、やっておしまいなさい!!!」 「だあっ、いくぞテメーら!! 戦闘開始だ!!」 ※※※ そして、冒頭の場面に至るわけである。別に俺のせいだとか言わないでほしい。結婚するだけの覚悟はさすがに出来ないぜ。……現在は下の階から合流した後続部隊を含めて、メリーの率いる軍勢と激しい戦闘を繰り広げている。 アッシュのマシンガンが火を噴いた。メルのスカートから武器が飛び出し、コタマの操るホイホイさん(!?)が舞う。背比べさんの言った通り、彼女らの実力は本物だ。 「ヘッ、そろそろ見せてやろうかなァ!」コタマが十字架を手にし、それを振る。一瞬立ち止まった神姫たちは、十字架が通り過ぎたあと、いきなりあらぬ方向へ動き始めた。 「ホラホラ、『ドールマスター』様の実力、とくと拝みなァ!」 そして俺は雅、ツクモ・モガミと共に、メリーの説得に当たった。 『姐さん、元に戻って下せえ! 俺は胸の小せえ姐さんも好きで……へぶっ!!』 『バカだねぇツクモ、それじゃ褒めてないじゃないかい……ほら姉御、アタイを見てください! ペッタンコですよ、姉御と同じでうぅぎゃああああああ!!』 「そりゃフォークだから当たり前じゃないですかぁぁ~!!」 メリーは武器がほぼ無いってのに驚異的な力を誇った。俺が気合いを入れてチューンナップしちまったせいかヴァッフェバニー並みの強力な脚力を発揮し、その辺に落っこちていた売り物のミサイルを引っ掴んで、こっちめがけて投げつけたのだ。雅はかろうじてかわしたものの、ツクモ・モガミはあっけなくダウンした。 「アキラ! 説得なんか無理よ!」 「んなの分かってら! いいから耐えろ!」 こちらが押してはいるものの、さすがに疲労の色が濃くなってきた。一体で相手にする数が多すぎるのだ。人が近づいて神姫を止めようにも、あの銃撃やらレーザーの中に飛び込んだらどうなるかは想像したくない。 多人数を一度に相手にできるやつ……そんなやつ、ホイホイさんを使うコタマ以外にいるのか? と、 「ふう、ふう……ふうぅ、ごめんねぇ輝はん。遅れてもうて」 考えていた俺の後ろに、そいつはやってきた。 「はあ、メリーちゃんが大暴れしとるん?」 初菜の口調は、まるで人づてにうわさ話を聞いた時のようだった。 「遅えよお前! 大方また迷子になってたんだろ!」 「ごめんなさい。初めての場所やったから」 目の前で大規模な戦闘が起こっているというのに、初菜は全くのんきなものだ。軽く腹が立ったが、俺の知り合いのうちでこの状況に対抗できるのは、おそらくこいつしかいない。 事情を話すと初菜は、牡丹と顔を見合わせた。 「……つまりこのままでは輝様は、メリーのものになってしまうやもしれない、と」 「そうなんだよ。なんとかしてくれ、複数人相手の戦法だってあるだろ」 「……承知いたしました」 と、牡丹は初菜と少しの間示し合わせた後、武装を装備するや否やサッと飛び降りる。アッシュに指示を出していた直也と、二体のホイホイさんを率いるコタマが荒く息を吐きながら言った。 「おい輝、お前って奴はどんだけ鬼畜なんだ。あんないたいけな女性を戦場に送り出すなんざ、世のフェミニストから総スカンだぜ」 「こりゃ将来は亭主関白だね、絶対そうだよ」 「黙って見てろ。……『遊びの達人』の実力が拝めるぞ」 牡丹はまず、大型筐体の中へと向かった。中央に川が流れているステージで、左右に森が鬱蒼と茂っている。牡丹は一番高い木の上に陣取ると、特撮ヒーローよろしく神姫たちを見下ろした。気づいた貧乳軍の神姫が、口々に喚き散らす。 「チっ、新手だよ!」 だが牡丹は全く動じず、能面よりも能面らしい表情で下界を見下ろすと、おもむろに懐から人の小指第二関節ほどの大きさの和紙と、それからカラオケで使うタイプのマイクを取り出した。 牡丹の武装を見るのは、俺も久しぶりだ。名前に合わせて白く塗ったフブキの忍者装束に、背中に背負った三味線。いつも牡丹の武装はこれだけだ。しかし、これだけで終わるならば奴は『遊びの達人』などと呼ばれていない。 牡丹は和紙を持ち直すと、さらにそれより大きい紙―――人間大に換算すればA四サイズほどだろうか―――を大量にばらまいた。俺は牡丹のこの戦法を理解しているから分かるが、奴は神姫たちが三つのグループに分かれるように紙を撒いている。紙には表に細かく文字が書いてあり、森林ステージの風や川の流れに乗って、あるものは水面に、またあるものは川岸にと、すべて神姫の足元に落ちた。 ああ、今日はこれなんだな。と俺が考えるとすぐに、初菜がヘッドセットを取って牡丹に指示を出した。 「それじゃ牡丹、急ぎやから序歌なしで、略式でいってみよか。三十番からお願いね」 「……御意」 いよいよ技が繰り出されるかと、身構える神姫たちの前で、牡丹はマイクを持ち、すっと一瞬息を吸い込んで、 ―――「ありぃ~あけのぉ~、つれなくみえしぃぃ~わかれよりぃ~、あかつきばかりうきものはなし~」 ―――……。 再度、「あかつきばかり~」と、顔から全く想像できない、牡丹の朗々とした声が響く。神姫たちは完全に度肝を抜かれた、すっとぼけた表情で立っていた。 しかし、二度目の下の句を詠み終えた牡丹が真顔でボソッと「……時間切れ」と言った、その瞬間、 「―――ッ!? がはあっ!!」 なんと三体、つまり一グループにつき一体の神姫の足元にあった紙が、大爆発を起こしたのだ。 シン―――と爆発が収まり、牡丹が「ひさぁかたの~」と次を詠むと途端、神姫たちが大騒ぎした。 「なっ、なんなの今の!?」 「ちょっと、落ち着いてみんな!!」 と言った神姫が、紙を一枚踏んづけると、牡丹が、 「……お手つき」とボソッと言う。また紙が爆発し、神姫が吹き飛ぶ。 もはや神姫たちは足元の紙を踏まないように、その場から動けなくなってしまった。また「よをこめて~」と次が詠まれる。 ……分かっていただけただろうか。これが牡丹の『百人一首爆弾』である。発動したが最後、間違った取り札に触れるか、誰も触れないでいるかすると、牡丹の合図で爆発を起こすのだ。タネを理解した神姫たちはもう札を取ることに夢中で、牡丹はまだまだ淡々と和歌を詠み続けるのだった。 ※※※ 「……なんじゃありゃ」と、直也がつぶやいた。 無理もねーよな、あんな意味の分からない武器。しかも初菜と牡丹はこうしたヘンテコな戦法を大量に持っていて、この爆弾もそのうちの一つに過ぎないのだ。 だが、それでも牡丹が侵入したことによって、筐体の神姫の多くが無力化されている。メリーが攻撃の手を止めて喚き散らした。 「なっ、なにを手こずっているんですか! さっさと片付けてしまいなさい!」 「隙ありだよっ!」 背後からメルのシザー状スカートが伸びて、エルとクレアの拘束を切り落とす。自由になった二人は雅とコタマの背後にまわった。 「さ、これで形勢逆転よ」 「お、おおおのれっ! ですが、まだ私の戦力は……!」 その時丁度、背比さんたちの近くに缶コーヒーを持った男が一人やってきた。 「おおすまん背比。なにこれイベント?」 「ああイベントだよ貞方。携帯見てみろ、フラグもたってんぞ。『午前十二時四十九分、貞方祥太は死亡する。 DEAD END』ってな☆」 「ぐおお離せ! 首が……あっ今みぎぃっつった!」 綺麗なスリーパーホールドから解放された彼は、ひどく咳き込みながら背比さんから事情を聞いた。 「ああ、またそーゆーアレなのね。はいはい分かったよ、行くぞハナコ」 ハナコ、と呼んだハウリンと共に、彼はバトル筐体へと向かう。途中、ハナコに武装を装備したようだったのだが、遠目から見ても奇特な武器を持っていた。明らかにハウリンのデフォルト装備には含まれていない、あれはパイルバンカーだろうか。 「……ああっ!? ちょっ、あの人って」 棚の陰に隠れてパソコンを操作していた直也が、突然手を止めた。 「この辺で『ディフェンダー』って呼ばれてる人じゃねーか」 ハナコは牡丹と同じく筐体に侵入すると、ちょこちょこと歩きながら神姫の群れへと接近した。 「ま~た新手ですか、忌々しい! ちょっとイーダさん、私は手が離せないのでお相手してあげなさい」 「はいですわ、お姉さま」 さっきのイーダがメリーの傍から離れ、複数の神姫と共にハナコへ向かう。ハナコは自分を取り囲むイーダたちの殺気立った姿を見ると、わずかに体を縮こまらせた。 「貴女、ハウリン型とお見受けいたしますが?」 「は、はい。そうです」 「まあ! 貴女は胸の薄いタイプの神姫でありながら、人間の味方をするんですの!?」 「あ、あの、喧嘩はよくないと思うので……」 「ハ! どうせハウリンなんて武装をつけてしまえば胸なんて見えないから、自分には関係ないと思ってらっしゃるのでしょう」 「いえ、その、そうじゃないです。でもショウく……マスターが好きだと言うなら、別に……」 「戯言ですわッ! 所詮貴女も人に迎合する存在ですのね!」 言うが早いか、激高したイーダはトライク・モードに変形し、ハナコをひき潰さんとする。アークの悲劇の再来かと、俺は一瞬目を覆いかけた。 だが、ハナコがあのおかしな武器を構えると、驚くべきことが起きたのだ。 「なッ!?」 武器からシールドが展開し、トライクのホイールを防いだではないか。ハナコの顔面に届く寸前で、火花を散らしている。背後から斬りかかるジールベルンの赤い剣も、別のギミックに阻まれる。 「なんなんスか、あれは」 「あれは槍だよ。ハナコがディフェンダーって呼ばれる理由だ」 ディフェンダー。なるほど、ハナコはあれだけの巨大な武器を、一切攻撃に使用しない。ただひたすらに攻撃を防ぐことのみに使っている。ハナコを攻撃する神姫が三体、四対と続々増えても、徹底的に防御をするのみだ。 そのうちしばらくすると、イーダが攻撃の手を止めて、丁度雅とメルの技を受け止めたメリーに向いた。 「……メリエンダのお姉さま」 「ハア、ハアっ! なんですかイーダさん!」 「わたくし、こんなことをして戦う意味が分からなくなってしまいましたわ」 「なんですってええええええええ!!!???」 「だってそうでしょう? 殿方がみな巨乳好きならば、なぜ私たち胸の小さい神姫は、みな最初から大きく作られなかったのかということになるではありませんか」 イーダはあまりにもハナコに対しての攻撃が届かず、戦う意思を喪失したようだ。表情は、先ほどの弱気だが気の優しい顔に戻っていた。そうだ、名前も知らないイーダよ。お前は今とても大切なことに気づいた。 「……メリィーーーーーっ!!」 俺の合図とともに、雅が両手の箸から火炎を吹き上げ突っ込む。 ―――胸の大きいも小さいも関係ない。肌が白かろうが黒かろうが、背が低かろうが高かろうが、髪の色だって、そんなの一切関係ない。どんな神姫だって、誰かから愛されている。ずっとそうではなかったか。 雅に続いて、コタマが、メルが、エルがアッシュがクレアがイルミが、思い思いの武器や装備をまとい突進する。オーナーの想いがこもった、特別なものを持って。 もう、こいつらを止めるものはいなかった。メリーに味方した神姫たちはもはや、牡丹の百人一首に参加するか、ハナコと戦って毒気が抜けるかでその場から動かない。最後に仲間だと思っていた神姫たちに見放されたメリーは、哀れだが裸の王様同然だった。 だがメリーよ。それでもお前は、俺の、 「大事な……相棒なんだぜ」 雅の箸が、一番に届く。頭上に振り上げられた箸が、メリーの瞳に映りこむ。さあ、戻ってこい。 「しばらく謹慎しなさい、バカ貧乳」 「あ、あ、あと6ミリ……高ければああぁぁぁ!!!」 最後の言葉と共に、メリーは山となった神姫の群れに沈んでいった。 こうして、事件は決着したのだ。 ※※※ 頭を失った貧乳軍はあっけなく崩壊し、事態は急速に終結した。神姫たちはみな、元のオーナーのところへ帰って行ったようだ。彼女らがオーナーたちとまた信頼を築けることを、今は祈ろう。 そして、俺たちは背比さんたちとしばらく交流をした。 「すげえ武装ッスね~。今度設計図見せてもらってもいいッスか?」 「……その時、桜の木の陰から、殺されたはずの女がぬっと……!」 「きゃうううううう!!」 やはり今回のMVPである貞方さんとハナコは人気で、直也から武装の話を聞かれたり、牡丹から怪談話を聞かされたり……いや、怪談はどうなんだ。 でもって、俺はメリーと共に正座して説教を受けている。しばらくこの神姫センターに大手を振って来ることは出来なさそうだ。 「まったく、今度やったら承知しないのです」 「メリーさん、次からはあんまり皆さんに迷惑をかけないようにしましょうね」 「おのれ……まだ私は負けを認めたわけでは……」 「メリー殿、これ以上の抵抗は懲罰房行きでは済みませんよ」 勝てば官軍、負ければ賊軍。悲しいがそんなものだ。勝ったところでこいつらの主張が通ったとは思えないが。 なぜなら、誰も嫌ってなんかいないからだ。 「メリーよぉ」 「なんですかアキラさん。まだ私を辱め足りないんですか。えーいいですよ、別に煮るなり焼くなり、縛るなり舐めるなり愛撫するなり……きゃん!」 「いいかげんにしろっての!」 頭を指で軽く小突いてやった。こいつは反省しているのかどうか分からん。 「いいか、誰もお前が嫌いなんて言ってねーよ。あのイーダの言った通りな、みんな巨乳が好きだってんなら、なんで全部の神姫を胸でかく作らなかったんだってことになんだろうが」 実際には多種多様な神姫がいるだろう。それらはみな違った思惑があれど、人から求められて作られたのだ。 「だからなにも引け目に感じることはねーよ。お前はお前で、俺の大事な相棒だ」 もちろん雅もな、と言うと、メリーと雅の顔がサッと赤くなった。次いで、コタマが鼻をつまんで「クサッ」と言った。 「……じゃあ」 「なんだ」 「好きって言ってください」と、メリーがポソッと言った。 「は?」 「大事だって言うなら、それを口で示してください」 「いや、その好きっつーのはどういう意味で……」 「好きじゃないんですか! これだけ恥ずかしい思いをさせておきながら! う、うわぁぁぁぁああんん!」 「な、なんだよ。泣くなメリー」 「ちょっとメリー、絶対アンタだけに好きなんて言わせないんだからね!」 なんなんだこいつらは。俺は健五と初菜に助けを求めたが、 「あー、輝さんが女の子泣かせたー」 「いいかげん調子にのるなよ健五! おい初菜、こいつを黙らせろ」 「えー、うち女の子に冷たくする人の言うこと聞くのいややわぁ」 「なんだとおぉ!」 この調子で、ずっと振り回されっぱなしだった。ま、厄介な事件だったが、最後にはみんな笑うことができたから良しとしよう。 ―――ならよかったのだが、 「ところでアキラさん」 「なんだ」 「結局アキラさんは大きいのと小さいの、どっちが好きなんですか?」 「え!?」 唐突な質問だった。初菜も背比さんも見てるし、正直に答えたほうがいいのかこれ? 「いや~、やっぱ俺も男だからさぁ、大きいほうが……」 『グリズリー・クロスッッッ!!!』 「ぐわああああああああ!!!」 結局最初から最後まで、口は災いのもとってことだった。 ―あとがきー …はい、いかがでしたでしょうか。にゃー様作『15cm程度の死闘』とのコラボ話でした。 神姫センターに大勢で上り込んだ挙句、突拍子もない理由で大暴れして帰っていくという、実際とんでもない所行。弧域くんたちにもエルさんたちにも本当に申し訳ないことをしたと思っています。――え、本当は楽しかったんだろって? ええ、その通りです。戦隊でもプリキュアでも、コラボってわくわくするものじゃないですか。 ただ、書いている間『ハナコちゃんと牡丹はどうにか活躍させたいなぁ。あ、コタマさんの口調はこれでいいのかな? あれ、どのキャラとどのキャラをどう絡ませよう?』などと、いろいろと悩むこともありました。もしかすると、キャラクターの描写が力不足な点があったり、15cm程度の死闘本編とは異なっている部分もあるかもしれませんが、その点はどうか見逃してくださいませ(時系列的には、八幸助さんの謎の能力が発動した後かなというつもりで書きました)。 にゃー様の描く武装神姫の世界は、縦横無尽で底の見えないところだと私は思っています。時にコミカル、時にシリアス、また単にロボットや人形の枠では割り切ることのできない、人間味にあふれる神姫たち(私そこが大好きなんです!)。次はどんな世界が待っているんだろう? と、毎回楽しみです。 武装食堂サイドとしても、かれこれ一年以上もネタにし続けてきたメリーの胸のサイズの話を、どこかで決着しなければと思っていました。まあ、たぶんまだまだネタに…、\ピンポーン/ ん、なんだ? なんか届いたかな? お中元にはまだ少し早いし… それでは、ここまでとさせていただきます。にゃー様、そしてハナコちゃんたち、今回はありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。 それにしてもなにが届いたんだろう? 差出人は、メ… 武装食堂へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/782.html
Gene Less じ:ジーンと来る・・ワケねえよ! い:いいのかよ!? いいんだよ!! ツッコんだら負けだよ!!! ん:ん? とか深く考えてもしょーがないよ! れ:冷静になったら負けだよ! す:すいませんやりたい放題っす(爆) Gene Lessは、つまりは右脳で楽しむラジカル神姫オムニバスです♪ 注意?:お読みの際は用法要領を守ってるといいのかなぁ?(聞くな) 書いたの/うさぎなひと 目次 Gene1 解体屋 →→→Gene1おまけ Gene2 花屋 →→→Gene2おまけ Gene3 床屋 →→→Gene3おまけ Gene4 本屋 →→→Gene4おまけ Gene5 地上げ屋 →→→Gene5おまけ Gene6 靴屋 →→→Gene6おまけ Gene7 とうふ屋 →→→Gene7おまけ Gene8 ノミ屋 鳳凰杯とリンク →→→Gene8おまけ Gene9 餅屋 →→→Gene9おまけ Gene10 オケ屋 →サビ抜き版 →→→Gene10おまけ Gene11 テキ屋 →ようこそ黒葉学園へ!とリンクしてる気もする〈笑) →→→Gene11おまけ Gene12 服屋 →→→Gene12おまけ Gene13 お好み焼き屋 →→→Gene13おまけ Gene14 護り屋 →→→Gene14おまけ Gene15 殺し屋 →→→Gene15おまけ Gene16 浜茶屋 →→→Gene16おまけ Gene17 犬小屋 →→→Gene17おまけ Gene18 隣部屋 →→→Gene18おまけ Gene19 母屋 →→→Gene19おまけ Gene20 楽屋 →→→Gene20おまけ Gene21 特撮屋 →→→Gene21おまけ Gene22 田ミ屋 →→→Gene22おまけ Gene23 エチゴ屋 →→→Gene23おまけ Gene24 酒屋 →→→Gene24おまけ Gene25 風呂屋 →→→Gene25おまけ Gene26 当たり屋 →→→Gene26おまけ Gene27 たま屋 *えろいのかもしれぬ(え) →→→Gene27おまけ Gene28 鍛冶屋 →ホワイトファング・ハウリングソウルからあのヒトが! →→→Gene28おまけ Gene29 空き部屋 →→→Gene29おまけ 各所で小ネタに以下の作品の名前が使われております事をここでお詫びしておきます。 Mighty Magic、神姫狩人、ねここの飼い方、HOBBY LIFE,HOBBY SHOP、岡島士郎と愉快な神姫達、妄想神姫、戦うことを忘れた武装神姫、剣は紅い花の誇り、神姫ちゃんは何歳ですか? せつなの武装神姫 2036の風 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 神姫長屋の住人達。 ホワイトファング・ハウリングソウル Gene Less本編 G・L《Gender Less》 コメントがありましたらこちらに。アンコール、ネタリク等も受け付けております 名前 コメント お気に召した奴らの登場話に投票でもしてやってください 選択肢 投票 Gene1解体屋 (5) Gene2花屋 (0) Gene3床屋 (2) Gene4本屋 (1) Gene5地上げ屋 (0) Gene6靴屋 (0) Gene7とうふ屋 (1) Gene8ノミ屋 (3) Gene9餅屋 (3) Gene10オケ屋 (0) Gene11テキ屋 (0) Gene12服屋 (0) Gene13お好み焼き屋 (1) Gene14護り屋 (0) Gene15殺し屋 (0) Gene16浜茶屋 (0) Gene17犬小屋 (0) Gene18隣部屋 (2) Gene19母屋 (0) Gene20楽屋 (1) Gene21特撮屋 (0) Gene22田ミ屋 (1) Gene23エチゴ屋 (0) Gene24酒屋 (5) Gene25風呂屋 (2) Gene26当たり屋 (1) Gene27たま屋 (0) Gene28鍛冶屋 (3) Gene29空き部屋 (1) - -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2726.html
新たなる力を手にし 7月29日(金) 「練習相手、ですか?」 翌日の午後、私は柏木さんに一つの頼み事をしていた。 昨日の午後と今日の午前中に練習した薙刀と機関銃の成果を確認したかったのだ。 「そうですね、僕もたまにはライドしないと、体が鈍ってしまいますからね」 「そうですねぇ、店長は慢性的に運動不足ですし」 そう言ってエリーゼは腕を組んでいる。そんなエリーゼを思わずまじまじと見てしまう。 「…………」 「ん、どうしました?」 「最近驚かさないなと思って」 「ああ、店長と樹羽さんには効かないことはわかりましたから。無駄なことはしたくありません極力」 どうやらこれからは驚かさないようだ。内心では驚いていて最近それが表に出そうだと思っていたから、都合がいい。 と安心した所を驚かされるのが容易に想像できるから、あくまで気は抜かないが。 「そう言えば華凛さんはどうしたんです?」 柏木さんが疑問に思うのは無理もないが、今日華凛は用事があるとかで午後になったら来ると言っていた(連絡は昼にあったけど)。だからもうすぐ来るはず。 「こんにちは~。まったく夏期講習って面倒よね~」 噂をしたらなんとやら、間延びした華凛の声がして店の扉が開かれる。その瞬間、エリーゼの姿が視界から掻き消えるのを私は見逃さなかった。 華凛は制服姿だった。しかし、どこかやつれているようにも見える。いつも鮮やかとも言える髪の張りがない。疲れているのだろうか? 「いらっしゃい、とりあえずそこに腰掛けて待ってて下さい。今何かいれて来ます」 柏木さんは空いているソファを指し示し、カウンターの奥のドアの奥に消えた。 「じゃあ、よっこいしょっと……」 華凛が空いているソファに座ろうとした。つまり出来なかった。 「トゥッ、ヘァーッ!」 「どああっ!?」 ソファの座る部分がばん、と開き中からエリーゼが飛び出したのである。何故であろう。なんか背中に大きなオーラのようなモノが見える。まぁ気のせいだろうけど。 「エ、エリーゼ! あんたは一体なんなのよ!」 「やっぱり華凛さんは驚いてくれるんですね。まぁこんな事が得意でも何の意味もありませんけど」 エリーゼが何やら感傷に浸りながらソファから降りる。華凛は軽いため息をつきながら今度こそソファに座った。 「はぁ……なんかお店に来る度に驚かされてる気がする」 「私と柏木さんに効かないから華凛に照準を定めた?」 「シリアにやればいいじゃない。なんであたしばっかり……」 当のシリアはポーチの中で苦笑いを浮かべている。この間なんか影が薄くないかと相談されたが、もしかしたらその通りなのかもしれない。 「で、首尾はどうなの?」 「それを今日確かめる」 「そっか……」 華凛はそれきり黙ってしまった。やっぱり疲れているのかもしれない。 妙な気まずさだけが店内に残り、私は柏木さんが帰ってくるのを待つしかなかった。 朝目を覚ますと、異様に暑かった。昨日は熱帯夜だったから、朝になって余計に熱いのかもしれない。 とてつもなくだるい体をなんとか起こす。体が気持悪いと思ったら寝汗で服がびしょびしょだった。 「…………」 時計を見てみると、既に短い針が真上を指していた。訂正、朝ではなく昼だ。 「起きなきゃ……」 今日は朝から樹羽と一緒に行動するはずだったのに、つい寝過ごしてしまった。 今日は29日、貴重な時間を睡眠に使ってしまった。これからは気を付けないと。 とにかく樹羽に連絡しなければならない。あたしはベッドの脇に置いてある携帯を手に取る。これだけの作業なのに、下手をすれば息切れしそうになる。 落ち着いて呼吸を整え、樹羽の番号を呼び出し、通話ボタンをプッシュ。数回のコールで電話は通じた。 「もしもし、樹羽?」 『華凛? どうしたの? 今日来なかったけど』 樹羽の問いに、あたしは前もって考えて置いた答えを言った。 「ちょっと用事があってね。ごめんね、昨日の内に言っとけばよかった」 『ううん、平気。午後は来れるの?』 「ええ行くわ。樹羽の成長ぶりを見ないとね」 『そんなにうまくないよ?』 「謙遜しない。樹羽器用なんだから、武器の一つや二つ、すぐに使いこなせるでしょ」 『大袈裟』 自然と笑いがこみあげてくる。少し落ち着いてから次の言葉をつむぐ。 「じゃあ行くからね。勝手に始めちゃわないでよ?」 『うん、待ってる』 電話を切る。通話時間はそんなにかかっていないが、不思議と体のダルさは取れていた。これなら動ける。 あたしはまず汗で濡れた体をどうにかしようと風呂場へ向かった。 樹羽には用事があるとしか言っていなかったが、あたしは制服を着ていくことにした。夏期講習があったと言えば問題ない。 「こんにちは~。まったく夏期講習って面倒よね~」 あたかも高校から直接きたように扉を開ける。店の中にあるソファには仁さんと樹羽が座っていた。シリアも樹羽のポーチから顔を覗かせている。 「いらっしゃい、とりあえずそこに腰掛けて待ってて下さい。今何かいれて来ます」 仁さんが空いているソファを指し示し、カウンターの奥のドアの奥に消えた。 「じゃあ、よっこいしょっと……」 あたしは指定されたソファに座ろうとした。その時のあたしは一週間前の経験を忘れていたらしい。 「トゥッ、ヘァーッ!」 「どああっ!?」 突然ソファからエリーゼが飛び出してきた。一週間前にも同じように驚かされた気がするのは気のせいではない。 「エ、エリーゼ! あんたは一体なんなのよ!」 「やっぱり華凛さんは驚いてくれるんですね。まぁこんな事が得意でもどうしようもありませんけど」 エリーゼがソファから降りる。あたしは軽くため息をつきながらソファにすわった。 「はぁ……なんかお店に来る度に驚かされてる気がする」 「私と柏木さんに効かないから華凛に照準を定めた?」 「シリアにやればいいじゃない。なんであたしばっかり……」 ま、こんなこと言っても何も変わりはしないけど。 「で、首尾はどうなの?」 「それを今日確かめる」 「そっか……」 自然とそこで会話が途切れた。なんでだろう、理由はわからない。疲れてるのかな、あたし。 しばらくすると仁さんが人数分のカップを持ってきた。カップからは湯気が立ち上り、少し甘い匂いがする。それはチョコレートの匂いだった。ホットココアだろう。 「とりあえずどうぞ」 あたしと樹羽はそれを受けとり、一口。うん、なんか程良い甘さだ。 「華凛さんも来たことですし、始めましょうか」 実はあたしは仁さんから呼ばれていたりもする。仁さんがバトルしている間の店番だ。まぁ、あたしは呼び出されるまでもなく来るつもりであったが。 二人が練習用の筐体に向かう。あたしは樹羽の様子を見た。少し緊張したような、そんな表情。もっとラクにしたらいいのに、とあたしは思ったが言わなかった。 仁さんはいつもの調子でヘッドギアをつけている。この人は昔からどこか掴めないイメージがある。空気(決して影が薄いと言う意味ではない)、と言うかそんな感じ。悪く言って目立たない。良く言ってどこでも対応できる。そんな店の主は今、あまり得意でないバトルをしようとしている。練習相手としてはちょうどいいかもしれない。 樹羽がシリアと言葉を交す。会話の内容まではここまで聞こえてこないが、樹羽の表情が僅かに和らぐのがわかった。 (シリアも頑張ってるわね) やがて二人が筐体にライドした。あたしは戦闘の様子を店のパソコンで見ることにする。 「……あと、3日」 不意にそんな言葉が漏れた。そう言えば、あと3日しかなかったのだ。 「……っ」 頬を一筋の涙が伝う。あたしはそれを拭うとパソコンの画面を食い入るように見た。 時間がない。わかってはいるけど、これは樹羽の問題だ。あたしが動き回っても限界がある。 「樹羽、頑張ってよ……」 あたしは準備を進める樹羽にそう小さく呟いた。 第九話の2へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/17.html
凪さん家の十兵衛さん 第五話<殺戮の歌姫> 闇、漆黒の空に木霊するは、妖しき姫の歌声。 今日もまた、歌に魅了され己を無くした者達が、残酷な舞踏を披露する。 光、漆黒の空を貫くは、地獄から来た悪魔の咆哮。 それは不幸の鎖を食いちぎる者、その左目に輝くは、紅き決意の灯火。 「第一、第二小隊は第三小隊の活路を開け!第四、第五小隊は第三小隊の援護!なんとしても奴を倒すんだ!」 『ラジャー!!』 薄暗いワゴン車の中、モニターの光だけが車内を照らす。画面には無数の神姫の姿が映し出されている。 「今日で終わりにしてやる…」 そうつぶやき、眼鏡を光らせたのは、あの男。 ある日友人が持ってきた無残な神姫を、神姫への愛と己の技術を総動員して直し、後に伝説なる証、 左目の眼帯を与えた男。黒淵 創(くろふち はじめ)だ。 痩せ型の長身、だが適度に整った筋肉と顔立ちによりひ弱さはまったく感じられない。 「当たり前だ、創。今日で終わらせる!」 とその仲間が言う。 「あぁ、そうだね。…ミーシャ!他の奴には構うな!今は目の前の元凶を倒すことだけを考えるんだ!」 「了解マスター!行くよ!皆!」 マスター、私はいつも「ご主人様」と呼んでいる。 しかし戦闘時だけはマスターと呼ぶことにしている。 『ラジャー!』 と勢いを増した第三小隊の面々は一目散に目標へ向かう。 中央に位置するは創の武装神姫、天使型のミーシャ。その左右に控えているのはヴァッフェバニーだ。 これは本部より貸し出された神姫である。よって、決まった名前は無い。 今回の場合はツヴァイ3、ドライ3と呼ばれている。第三小隊の二番、三番機の意だ。 「マスター!目標を確認!情報通り天使タイプです!」 「よし!敵は手ごわいぞ…!慎重にな」 「了解!」 「おい!大丈夫か!シン!!おい!…くそ…第一小隊…全滅を確認…」 「くっ!」 「なんだ!?」 「敵の勢いが増しています!このままでは!」 予想をはるかに超えた軍勢がこちら側の神姫達に迫る。 「ミーシャ!!」 「了解マスター!」 私は今回の作戦の最優先目標にロックを合わせる。 今回の戦闘で、破壊許可が下りているのはあの大元の神姫のみ。 他の神姫は操られている神姫だ。中には非戦闘用の神姫もいる。 そう、神姫といっても大きく二つに分けることが出来る。 神姫と「武装」神姫だ。元々神姫と呼ばれる十五センチサイズのフィギュアロボは戦闘用ではなかった。 ただ純粋に人間のサポートをするために生み出された存在。 しかしある時…神姫に武装を施し、競技として戦闘行為を行うマスターが出てきた。 他の神姫のマスターもその競技と称した戦闘行為に賛同し、参加した。 そうして拡大を続けた戦いは、バトルサービスという公式に認められしものとなり。正式にバトルサービス本部が設立されたのだ。 そしてその集大成となるのが、最初から戦闘行為を考えられて開発、誕生した私達「武装神姫」シリーズである。 そんな二種類の神姫達がたった一体の神姫に操られ、暴走している。しかしあくまで操られているだけの彼女らに非は無い。 よってなるべく無傷で元のマスターの元へ戻す必要がある。 それが本部からの通達だ。はっきりいってかなり難易度の高いミッションである。 敵となってしまった友人達は容赦無くこちらに攻撃を加えてくるのに、 こちらはそうするわけにはいかないのだ。 私達はそんな容赦無い攻撃を受け流し、耐え続けなければならない。 しかし時間が長引けば長引くほど私達が不利になる。よって迅速な行動が勝利の鍵。 「いけぇぇぇ!ミーシャぁぁぁ!」 仲間達の想いと供に私は空を翔ける。 「はぁ、はぁ…」 そうして私は対峙した…白き天使に。 「いえ、悪魔ね…」 その敵はにやりと微笑み 「あら、悪魔だなんてひどいわ…フフ…貴女と同じじゃ無いの…」 「形が同じでもその心は違う!絶対に!」 「そう…じゃあ身を心も同じにしてあげる…」 その笑顔が歪んだ。 「!?」 強烈な精神波が私を襲う。これが例の…ぐ…心が侵食されていく、頭の中が取り替えられるような感覚。 ぐちゃぐちゃにかき回されていく…今までの思い出…それがどんどん遠くへ行ってしまう… ぐ、そんなの…あぁ…い、だ…めぇ…。 「ミーシャ!!!しっかりするんだ!!」 マスターの声が聞こえる。 「マ、スタ…」 「ほら、ほらほら…早く楽におなりなさい…」 あ、あぁぁぁぁぁ!一層精神波が強くなる。 「ぐ…、うぅぐ」 「ふふふ、がんばるわね?でも貴女のお仲間さんはもう私の友達になってくれたみたいよ?」 「え、まさか…ツヴァ、イさん…ドライちゃ、ん…」 抵抗を続けていたヴァッフェの二体は無残な姿になっていた。 装備を剥がされ、目を刳り貫かれ、腕はもぎ取られ…しかしそんな外見になっても立ち上がり、そしてこちらに銃を… 「そ、そんな…ぁが!」 パァン…パァン… 銃声が無数に響く。さっきまでともに戦ってきた仲間の銃弾が私に牙を向く。 「ぐ!あぁ、ぐぅあ!」 「ふふふふふふ…」 天使の象徴である翼には穴が開き。装甲がはじけ飛ぶ。 「く、ぬぅ…」 「あら、まだ動けるの?強情な子…じゃあもっと痛い思いなさい」 そう言うとその白き悪魔はそっとミーシャに近づく。 「ぐ!?あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 途端、腹部に激痛が走る。そして背中から青白い閃光がはみ出し、貫いた。 「がは、ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「ほらほらほらぁ…どんどん深く刺さっていくわ…ふふふ」 「ふぁ、ぁが…ぐ…」 意識が遠のく…も、もう駄目…ま、ますた…ぁ。 「さて、そろそろお遊びは終わ…?…ちっ…もうそんな時間?」 と、急に攻撃の手が止まる。腹部に突き刺されたライトセーバーはその凶刃の展開をやめ、セイバー発生部まで体内に入っていた状態から一気に引き抜かれる。 「ぐはぁっっっ!!がは…うぐ…」 私はその痛みに耐え切れず崩れ落ちる。そして 「ぐぁっ!?」 頭部に衝撃。白い悪魔が私の頭を踏みつけていた。 「ふん、運が良かったわね…でも次は…それとももう怖くて外に出られないかしら?」 「ぐ、う…うぅ」 私は涙を流していた。恐ろしいほどの恐怖、そしてその恐怖に負けた悔しさでだ。 「まぁいいわ…覚えておきなさい…私の名前はセイレーン…無垢な神姫を幸せの世界へと誘う女神…」 「がはっ!…セ、セイレーン…」 そう言うとセイレーンと名乗った神姫は私の頭部を踏み台に高々と飛び上がり、消えていった。 動かない体、目の可動範囲のみで辺りを見渡す。残ったのは装甲や武器の残骸だけ…神姫と呼ばれていた者達は一体として残されてはいなかった。くっ…連れ去られたんだ…。 「み、み…んな…」 私のせいだ、私がちゃんと出来なかったから皆が…。 「う、うぅ…う…」 私は泣いた…泣き続けた。遠のく意識の中で最後に見たのは走ってくるマスターの姿。 私を抱きかかえるマスター。 「…っかりするん…!みー…ゃ!!…―しゃぁぁ…ぁぁ!!」 私の意識はそこで途絶えた。 復帰したのは二十三時間後になる。 キュウン…センサー起動、視覚正常、全システムオンライン。 「う、うん…」 私は重いまぶたを開けた。 「ミ、ミーシャァァ!!!!」 「やったな!!」 「ミーシャさん!!」 目の前にはマスターいえ、ご主人様…それに凪 千晶様とその神姫、十兵衛ちゃんがこちらを覗いて 文字通り三者三様の反応を見せていた。 「ご、ご主人様…凪様…十兵衛ちゃん」 「「「ミーシャァァァ!」」」 「ふえっ」 ご主人様が私を抱き寄せる。 「良かった…本当に良かった…」 「ご主人様…」 「良かったです!ミーシャさん!!」 「おう、ひやひやしたぜ」 「ご、ご心配かけて申し訳ありませんでした…」 「良いんだよ!ミーシャさえ無事でいてくれたら!」 ご主人様はさらに私をすりすりする。 「あ、有難うございます…で、でも…」 そう言うとご主人様の表情が暗くなる。 「ミーシャ…うん、そうだね…」 「皆は、皆はどうなったんですか!!」 「…残ったのは…ミーシャ…君だけだ…」 「そ…そう…ですか」 信じたくなかった。でもそれが事実…。 「ミーシャさん…」 「………」 そうしてご主人様は私を机の上にそっと降ろす。 「なぁ…凪…」 凪様の方を向くご主人様。 「ん?…なんだ?」 「…僕は、なんとしてもあの違法神姫を食い止めたい」 「あ、あぁ…そうだな…危険だなぁ…」 「頼む!!十兵衛ちゃんの力を貸して欲しい!!」 と頭を下げるご主人様。 「…」 無言の凪様 「え…」 驚き、口に手を当てる十兵衛ちゃん。 「ご、ご主人様…?」 「分かってる!自分が何を言ってるかは重々承知だ!でも頼れるのは十兵衛ちゃんしかいない! あの神姫に対抗できるのは遠距離攻撃、それも超遠距離攻撃法を持った十兵衛ちゃんだけなんだ!! 頼む!!僕の友人達の神姫を救いたいんだ!!」 部屋の中に静寂…音で表すなら、まさしく「シーン」が相応しい。 「言いたい事はそれだけか?」 「…」 凪様の言葉は重く冷たい。 「確かにお前には感謝してる…。十兵衛の恩人だし、他の事だったら快く受けただろう 。でもこれは違う。十兵衛が今まで体験してきた地獄…それをしろと言ってるのと同じだ…」 「…」 そう、話によれば十兵衛ちゃんの前身は地下の違法バトル出身の神姫だという。そこで培ったスキルと眼帯に内蔵された超高性能カメラを駆使し、 この前の新人戦では新人の名に相応しくない圧倒的な強さを見せて優勝していた。 しかし十兵衛ちゃんはいつしかその地下での戦いを拒むようになり、ついに逃げ出したのだ。 「それに…」 「…」 「頼む相手が違うぞ」 「え…」 「戦うのは俺じゃない、十兵衛なんだろ?確かに俺はどちらかと言えば反対だ。 でも俺は十兵衛になら出来るんじゃないかと心のどこかでそう思っている」 「マスター…」 「だから…頼むなら十兵衛に頼め!俺は十兵衛の意見に合わせる…」 と背を向かれてしまった。 「凪…」 「マスター…」 「十兵衛ちゃん…」 「はい…」 「君の答えを聞かせてくれ…もちろん無理をする必要は無いし、君一人を戦場へ向かわせるつもりも無い…」 「黒淵さん…」 「…」 しばし静寂…。そして十兵衛ちゃんが口を開いた。 「良いですよ、やりましょう」 「じ、十兵衛ちゃん…」 「マスター!私やります!私もこれ以上皆が…ミーシャさんがこんな目にあうのは見たくありません! それに私にしか出来ないなら!私がやるべきなんです! 私はこれまで地下で何体もの神姫を文字通り葬ってきました。 その罪を償うわけじゃありません…でも…せめて …せめてこれ以上!神姫達やマスターの方々に悲しい気持ちになるのを黙って見ていたく無いんです! お願いします!マスター!私に戦わせてください!」 十兵衛ちゃん…なんて勇敢な…その表情からは揺ぎ無い圧倒的な決意が見て取れる。 「…」 凪様は静かに振り向き 「よし、やっちまえ十兵衛」 とにやりと笑った。 「はびこる悪を正義の業火で焼いてやれ!」 「はい!マスター!!」 「凪…十兵衛ちゃん…」 「そういうことだ創。協力してやるよ」 「凶大な悪を打ち倒しましょう!!」 あ、あれ…なんでノリノリ? 「で、でも!」 思わず口が動く。だってもし失敗したら十兵衛ちゃんが! 「大丈夫ですよ…ミーシャさん」 「じ、十兵衛…ちゃん」 「大丈夫です」 にっこりと微笑んだ。悪魔型で左目に眼帯をつけたその神姫の姿は 今までのどの神姫よりも天使に見えた。 さて、やっと俺達の出番か…まったく主役を蔑ろにするとは何事だ。 「まぁまぁマスター、良いじゃないですか」 「うぅむ…しかし…」 それにしても…まさか非公式なバトルをする羽目になるとは。しかもリアルバトルだ。 いや、バトルと言えるものなのかすら怪しい。 「大丈夫か?十兵衛?」 俺は不安になった。 「はい、怖くないわけではないですが…でも大丈夫です。もう私は一人ではありませんから」 「十兵衛…そうだな!」 とはいえいくら十兵衛でもファーストリーグランカーのミーシャでも敵わない相手を倒すことが出来るのだろうか。 確かにこの前の試合、 連勝街道まっしぐらなどこぞの金持ち坊ちゃんのやたらごちゃごちゃ武装したそいつの神姫を十兵衛は何食わぬ顔 (いや、実際はかなり怒っていたのだが)で撃ち抜いた。 その試合時間はわずか一秒。 この話は今思えばあまり思い出したくも無い、あぁなんか腹立ってきた…ま、まぁそのうち話すとしよう。 それはそれとして、とにかく十兵衛の戦闘スキルは特筆すべきものがある。だが…。 いや、待てよ…今回十兵衛がすることは簡単だ。 創達の神姫が囮となって引きつけている間に、十兵衛が超遠距離から目標を撃ち向く。 よく考えれば一番安全なのは十兵衛だ。十兵衛はひたすらチャンスを狙えば良い。 十兵衛に限ってチャンスを逃す…なんて真似はしないだろう。確実に初弾必中だ。 「うん、大丈夫だな…」 「はい!!」 「じゃあ行くよ。凪、十兵衛ちゃん」 創の準備が整ったようだ。 「おう」 「はい!行きましょう」 そして薄暗いワゴンの中。俺と創、その他のメンバーは数台に別れて車内に、十兵衛やミーシャ達は初期位置についていた。 「気分はどうだ、十兵衛」 「はい、大丈夫です」 ごぉぉぉぉぉぉっという音が相応しい風の音。 私は目標到達地点から程よく離れた6階の屋上に来ていた。 後ろには護衛としてヴァッフェバニーがいる。 「え、えと、本当にX2、X3さんで良いんですか?」 私は二人に話しかけた。 「ええ、構わないわ」 「大丈夫よ。X1…いえ、十兵衛さん」 なんでX2、X3なんだろうか。 「それはこの小隊が第X小隊。本来は存在しない小隊だからよ」 と、さっきX2さんが教えてくれた。 「でも、本当の名前とかは…」 「もちろんあるわ、でもそれは私自身が分かっていれば良いこと」 「今回はX2、彼女はX3と呼んで頂戴」 「は、はぁ」 「そうね、この戦いが終わったら教えてあげる」 「わ、分かりました」 「ザ…気分はどうだ、十兵衛」 マスターの声だ。 「はい、大丈夫です」 「もうじき始まる。気を抜くなよ」 「はい!」 「絶対無事に帰って来い!」 「もちろんです!マスター」 漆黒の闇が訪れる…。 闇ととも現われるは、悪魔の歌声を持つ天使。 無数の操り人形を従えて、今日も舞踏会が幕を開ける。 殺戮と言う名の歌にのせて…。 闇、それを見つめる紅き眼差し、その目に映る悪を撃て。 「3・2・1・0!!作戦開始!!」 『ラジャー!!!』 「よし、X小隊展開開始!頼んだぞ十兵衛!X2!X3!」 「X1!十兵衛!いきます!!」 「X2了解!」 「X3了解!」 次回<凪さん家の十兵衛さん第6話『朝靄の紅眼』>ご期待下さい。 第六話も読む
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2616.html
4ページ目『アマティ、キレる』 ※注意! 新年早々、マオチャオの扱いが悪いです。 壊したりするわけではありませんが、 今年一年を良きものとしたい方は、 申し訳ありませんがトップページへお戻り下さい。 フィギュアじゃないです。MMSです。 アマティと名乗る白い鎧を着込んだフィギュアは装備品を大げさに動かして身振り手振りそう言ったが、姫乃からしてみれば、フィギュアが動いているのだからそれは『動くフィギュア』であるし、MMSと言われてもそれが何の略であるのかさっぱり見当もつかない。 姫乃の理解を待っていたら日が暮れると思ったのか、アマティは「やっぱりMMSのことは忘れて下さい。とりあえずは神姫イコール動くフィギュア、ということにしておきましょう」と強引に神姫の話を切り上げた。 少々つっかかるものがあった姫乃だが、そこは大人らしく堪え、先を促した。 「事件を順を追って説明するとですね、先々週の木曜日に突然、カグラ以外の世界中の神姫がただのフィギュアになっちゃったらしいんです。しかもマスター達や世の中の神姫関係の記憶がみんな、今の姫乃さんみたく『MMS? なにそれおいしいの?』といった感じに改変されていました」 異変に気付いたカグラは真っ先に、自分の町内マオチャオネットワークにコンタクトを取ろうとしたらしい。 かつて数多くのマオチャオ達をまとめ上げた手腕は確かなもので、自由奔放なマオチャオが情報を共有化できるようになったのは、彼女の傍迷惑な発明品を遙かに凌駕する功績といえた。 しかし、カグラがいくらアクセスを試みても――正確に言えば彼女が勝手に借用しているマスターのパソコンをいくら漁っても、マオチャオネットワークが存在した痕跡すら発見することはできなかった。 青ざめたカグラはグーグル先生のみならず、普段は「にゃふー知恵遅れ」とバカにしているサイトに質問しまくったのだが、どの返事も彼女が期待したものとはかけ離れていた。 曰く、MMSとはアクションフィギュアである。 ケモテックやフロントラインなど神姫を世に送り出していたメーカーはまったく別の事業に手をつけており、本家大元のコナミは武装神姫というフィギュアを販売していた。カグラは公式ホームページを隅々まで確認したが、やはり販売されているのは一体数千円の心無いフィギュアのみだった。 実はコナミのページを確認する際、ちゃんとマオチャオのフィギュアが存在することをチェックしたわけだが、そのあんまりな出来(公式HPの画像ですら確認できる歪んだ造形、バランスの悪い体と武装、後期素体組とは明らかに差のあるクオリティ、そして微妙なお手頃価格)にキレたカグラは、長々と苦情を書いたメールを送った。それでも腹の虫が収まらず、側で呑気に勇ましいポーズを取っていたアマティを殴りつけたのだが、勿論アマティはこのことを知らない。 「……インターネットなんかは私達も確認しましたから間違いありませんが、これ全部カグラの証言ですからね。真偽はかなり怪しいですけどね」 「神姫を救うヒーローを嘘つき呼ばわりとは罰当たり千万にゃ。言っときますけどぉ、ワガハイがマインスイーパやってる間にこうなったんだからにゃ。ワガハイはにゃーんにも悪いことはしてませぇん」 「オオカミ少年の良い例だな。隠し事があるのなら今のうちに吐いたほうが貴様のためだぞ」 「ワガハイ、ほむほむに何か悪いことしたかにゃ……ワガハイがいなかったらほむほむは今頃、顔に似合わない萌えポーズを取ってたんだからにゃ」 「続けていいですか? ちょっと静かにしてください」 「待つにゃ、やっぱりワガハイが直々に教えてやるにゃ」 アマティの話に割って入り、自分の武勇伝を話したくて仕方がないという様子のカグラが身振り手振り、姫乃に語り聞かせる。……が、誇張と脱線が多分に含まれるせいで(肉球がSOS信号をキャッチしただの、ニボシ手裏剣は航空力学的に優れているだの)カグラの説明は支離滅裂でまるで要領を得ないものだった。 「ふうっ、ザッとこんなもんにゃ。理解したかにゃヤンデレ」 「んー……んん?」 「要するに、フィギュア化した神姫は心を持った神姫に触れられることで目覚めるんです。でも目覚めた神姫は正気を失っていて――」 「周囲にいる者を異空間に引きずり込み、襲いかかってくる。倒せばそいつは正気を取り戻し、異空間は消えるが、負けた場合は……フン、考えたくもないな」 カグラはアマティを八つ当たりで殴った時に異空間に引き込まれたのだが、その事実は彼女の中から消去されており、「アマティを助けるために触れてやった」と言わんばかりに胸を張っている。 「孤軍奮闘するワガハイの苦労が分かったにゃろ? アマティは超弱いから問題なかったんにゃが、ほむほむを相手にするのは骨が折れたにゃあ」 「ちょっと待ってください! 今聞き捨てならないことを言いましたよね!」 顔を真っ赤にしたアマティはカグラに詰め寄り、強靭な副腕で胸倉を掴んでそのまま持ち上げてしまった。アマティが身に付けている装備はマオチャオのそれと比べて遙かにボリュームがあるため、二人の絵面は強者が弱者をいじめる現場に見えなくもない。しかしいじめられる側、カグラは猿のように顔に皺を作り、アマティを挑発する気満々である。その表情たるや、神姫を好意的に見ている心安らかな姫乃をして(うわあ、殺したい)と思わせる程だった。 「だってぇ~、正気を失ってMOA(モード・オブ・アマテラス)を使えなくなったアマティにゃんて、ぶっちゃけおっぱいの無いイーアネイラみたいなもんにゃ」 「なっ、なんですってぇ!? 誇り高き戦乙女を愚弄しやがりますかこのクソ疫病猫!」 「違う違うにゃ。アルトレーネの強い弱いなんてどうでもよくて、ワガハイはただ『アマティは雑魚』って言いたいだけにゃ」 その時、姫乃はブチッ、と何かが切れる音を聞いた気がした。 「二人は手を出さないでくださいよ! 私一人で十分なんですから!」 ホムラの再三の説得にも応じず、アマティは姫乃が飾っている神姫――学ランを着たストラーフの前に他の二人を寄せ付けようとしない。 (し、神姫って怖い……) 席についたまま机上の三人を見守る姫乃が怯えるのも無理はなかった。アルトレーネの元々の顔立ちが凛々しさと愛嬌を同居させたものである分、憤慨極まったアマティは別人のような形相になってしまっている。勿論、すべてのアルトレーネがこうなるわけではなく、無意識のうちに部分的なMOA状態となったアマティは表情を形作る駆動系をオーバーロードさせているのだ。 そうとは知らずに顔と思考回路を火照らせたアマティはいよいよ、ストラーフに手を伸ばしたが、 「ちょ、ちょっと待って」 あと数ミリで指先が触れようというところで、姫乃に制止された。 「なんか用ですか! 邪魔しないでください!」 「ご、ごめんなさい。まだ、その、心の準備ができてなくて、ね? だって今から異空間に行っちゃうんでしょ。さっきほむほむも言ってたけど、もし戻ってこれなくなったら、どうしようかな、って」 「俺の名はホムラだ――そうか、そもそも異空間が人間にどう作用するか不明だな」 「参考までに、あなた達が行ったトコってどんなんだったの?」 「アマティの時は普通にアルジサマの部屋の再現だったにゃ。でも窓を開けたらいきなり城尊公園っていう変な場所だったけどにゃ。一発目だったこともあって、そこが異空間だって気付くのに時間がかかったにゃ。ほむほむの時は…………忘れた、にゃ」 「……ふん」 身の安全がかかっているため一つでも多くの例を知っておきたかった姫乃だったが、カグラとホムラ、二人の間に流れた【訳ありな雰囲気】を感じ取ってしまったからには、それ以上の追及はできなかった。 何故か落ち込んでしまった二人をよそに、アマティだけは準備を済ませてヤル気を見せていた。先程カグラを掴んで持ち上げた副腕は、今は神姫の背の丈程もある青い大剣を握っている。ヘルメットの上からピンと立った三角の耳は頻繁にピクリと動き、それ自体がアマティとは別の生物のようだった。 「もういいですか、早く戦いたいんですけど。姫乃さんは逃げるなら今のうちですよ」 逃げる、という言葉に少しカチンときた姫乃は後先のことを考えるのをやめた。そして過去に黒魔術に触れていた(本物かどうかはともかく)という自負にも後押しされ、いよいよ決意を固めるのである。 「よく分かんないけど、異空間に行けるチャンスなんて、人生でもう二度と来ないかもだもん。それに何かあったら、あなたが守ってくれるんでしょ、戦乙女さん?」 カグラのレーダーが姫乃を探し当てた理由を、この時はまだ誰も知らない。 ■キャラ紹介(4) アマティ 【弱さ、強さ、そしてネコミミを併せ持つ古の血統】 生まれつき持つネコミミがコアに影響を及ぼしているのか、自在に体のリミッターを外すことが可能。だがリミッター解除前の戦闘力は、起動したばかりの神姫が武装した程度(下記格付け参照)。 リミッター解除後は性格が感情的になるが、マスターである角健士郎の前でリミッターを解除するときは、極力沈黙し速攻で終わらせることで本性を隠している。既にバレていることには気付いていない。 マスターに負けず劣らずのロマンティスト。部屋に二人きりで住んでいた時は寄り添いながら遠い銀河に思いを馳せたりしたものだが、居候のカグラ、ホムラがやって来てからはその機会がめっきり減っていて、鬱憤が溜まっている。ひと月に一度は邪魔者の二人が寝静まった後、マスターにせがんで城尊公園に連れて行ってもらい、望楼から見上げる星に願いを託している。 【キャッツアイ】 アマティ、カグラ、ホムラの三人が強敵を打破するために結成した、自称ネコアイドルユニット。主な活動は、カグラの持ち込んだ厄介事が彼女らのマスターに迷惑をかけないよう迅速に処理すること。その活動は時に町内の揉め事を解決することにつながることから、マオチャオ達からは『理想的なマッチポンプ』と賞賛されている。 アマティがカグラの野望を打ち砕いた後も、カグラとホムラのマオチャオ(+α)ネットワークは強固に生きている。 【15cm程度の格付け】 マシロ ――《異次元の壁》―― コタマ、ハナコ ――《異名持ちの壁》―― ワタナベ3号 ――《ギガントプチマスィーン》―― オスカル、アマティ(MOA) ――《無双の壁》―― レミリア、フランドール、カシヨ ――《歴戦の強者の壁》―― エル、ニーキ(イルミ)、メル、ホムラ ――《エース級の壁》―― カグラ、オネ、グランティス、ヴェルカ、ストレルカ ――《凡百の壁》―― アマティ(通常) ――《武装と非武装の壁》―― ミサキ 次ページ『不思議の国の姫乃』 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/481.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-6 ・・・武装神姫向けサブパワーユニット・発売延期について・・・ 当社で鋭意開発中の武装神姫専用サブパワーユニット「DMH-Style」ですが、 最終調整段階に於きまして、ユニット2基搭載タイプ(-C型、-H型)の安定性 の面で、より一層の改良が必要であることが判明いたしました。 つきましては、ユニット自体の設計も一部改良をせざるを得ないこととなり、 誠に申し訳ありませんが「DMH-Style」の発売を当面延期とさせて頂きます。 ご興味・ご関心を寄せて頂いた皆様、ならびに各方面の皆様に深くお詫び申し 上げるとともに、何卒、ご理解賜りたく宜しくお願い申し上げます。 東杜田技研・小型機械技術研究製作部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 〜ちっちゃいもの研・応接室にて〜 久遠:「発売延期するんだ。珍しいねぇ、ちっちゃいもの研にしては。」 Cta:「仕方ないだろ、ユニットでかすぎて2台は物理的に無理だって判明したんだから。」 久遠:「物理的にって・・・。 作ってて誰も気づかなかったのか?」 CTa:「とりあえずやってみる、それから考える。ってのがウチの伝統だし。」 久遠:「・・・。」 沙羅:「ますたぁ〜・・・ こ、これは駄目っす・・・」(ぱったり) 久遠:「さ、沙羅っ! そんなにボロボロになって、何があったんだ?」 CTa:「さらに小型化して、何とか2基搭載できないかなーって、やってみたんだけど・・・」 沙羅:「たとえ制御できても、たぶん身体が追いつかないっすよ。。。」 ヴェルナ:「ぁーーーーっ!! ひさとーさーーーん! こんにちはーーーーーーぁ!!!」 (と、応接室に飛び込んできたヴェルナ、止まれずにものすごい勢いでロッカーにめり込む) CTa:「あーあ。やっぱ制御しきれないかー。 ヴェルナでも駄目っぽいね。」 久遠:「おい! 誰かこのユニットの開発をやめさせろ!!」 CTa:「えー? なんでー? きっちり調整すれば使えるよー。」 久遠:「駄目ったら駄目!! ったく、誰だ、こんなユニットを最初に作ったのは。。。」 CTa:「あんたの所のエルガとリゼだよ。 持ってきたのは1ユニット型だったけどね。」 久遠:「え・・・ そ、そうなの?」 CTa:(黙って頷く) 久遠:「じゃ、じゃぁ、1基搭載までは・・・いい・・・かな? あ、あはは・・・」 (あのパワーアップバカップルめ・・・ 俺の立場がないじゃないかっ!!) <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1307.html
「お待たせしました」 「いえいえ。……おお、見違えましたね」 私の声に応じて振り返ったマスターさんは、そう言ってにっこりと笑いました。 そして、傍に立てかけてあるパッケージイラストと私を見比べます。 「なるほど、箱の絵と同じになりましたね。素のままの犬子さんもアレはアレで素敵でしたが、やはりこちらの姿が武装神姫としての完成形なのでしょうね。より一層素敵ですよ」 「過分なお言葉、恐縮です」 膝を落とし似非正座の姿勢を取ってから、深々と擬似座礼を行なう私。おそらくマスターさんからは、私の倒した背中越しにぶんぶん振られるドッグテイルがよく見えたと思われます。 それから再び立ち上がり、ちょっと調子に乗って色々なポーズで武器を構えてみたりします。 ポーズをつけるたびに、笑顔で律儀に拍手をしてくれるマスターさんは、本当にいい人だと思うのです。 「……おや?」 「? どうかしましたかマスターさん?」 簡易ファションショーを中断し、私は何かに気付いたマスターさんの視線を先を見やります。 そこにあったモノは……武装装着の際に端子から取り外し、パッケージの影に置いた私の両腕パーツおよび両足パーツでした。 「私の余剰パーツが、どうかしましたかマスターさん?」 「どうかしました、と言うか……あの、いま犬子さんの手はどうなっているのですか?」 むむ、なにやらマスターさん、心なしか顔色が優れません。 「どう、と言われましても……」 とりあえず、私は【手甲・拳狼】をわきわき動かしつつ……おもむろに、【腕甲・万武】から腕を引き抜き、むき出しの接続端子をお見せしました。 「このようになっておりますが」 ……はて、マスターさんは、何を一体絶句なさっているのでしょうか? 「本当に、どうかなさいましたかマスターさん?」 「あー、いえ、なんというか……その装備は、そうやって腕を取り外さないとつけられないものなのですか?」 「ええ、そのようになっております」 「……あの、そうやって腕を引き抜いて付け替えるような形でなくて……例えば、普通に元の腕の周りを覆うような形式にはできなかったのですかねぇ?」 「正確なところは設計者に聞かないことにはなんとも言えませんが、私が考えるに、まず第一に仰るようなマスター・スレイブ方式では……」 「すみません、その『ますたーすれいぶ方式』と言うのは?」 「ええと、簡単に言えば中身の動きを外側が真似てくれる機構のことです」 「なるほど、お話の腰を折ってしまって申し訳ありませんでした」 深々。 「いえいえ、こちらこそ至らぬ説明で」 深々。 「では続けます、マスター・スレイブ方式では腕部パーツを内包しうるスペースの確保のために設計的に内部機構を圧迫し、小型化、生産性、強度の低下を招きます。元のサイズが小さいだけに、わりとそのあたりは死活問題なのです。そして」 言いながら、再びわたしはがっしょんと【腕甲・万武】に端子を接続しました。そうして再び制御下に置かれた【手甲・拳狼】を、マスターに向けてわきわきと滑らかに動かして見せます。 「第二に、こうして直接接続・制御することで、マスター・スレイブ方式では不可能な滑らかで繊細な可動が可能となります」 ……って、あら? マスターさんひょっとしてヒいていらっしゃる? 「ヒいたと言うわけでもないのですが……わりかしシュールですねぇ、とは思います」 そうなのでしょうか? 私たち武装神姫はつまり「機械」、修理や換装の際のパーツの付けはずしは当然と認識しています。 ですが、人間の方にとっては、それは不自然に感じるのでしょうか? 「そうですねぇ、人間、というか生体は、滅多なことでは部品の入れ替えはしませんから。 サイズ以外は人間そっくりに見える武装神姫でそうしているところを目の当たりにしてしまうと、戸惑ってしまうのかもしれませんね」 「なるほど、そういうものですか」 「そういうものです」 むむ、なにやら雰囲気が沈んでまいりました。 何とか情況を打開しうる行動選択はないものか、私の記憶野を高速検索です。 ですが、まだ起動したての私の乏しい経験では、現状に即した打開策はそう簡単には…… あ、1hitです。 早速実行してみましょう。 「唐突ですがマスターさん、僭越ながら隠し芸などを披露したく思います」 「おお? 拝見させていただきます」 居住まいを正し、積極的に興味を示すマスターさん。ううむ、どうやらこちらがこの沈みがちな雰囲気を何とかしようとしていることを汲み取っていただけたご様子。 そのお心遣いに報いねば、武装神姫がすたると言うものです。 私はマスターさんに背を向けて腕部パーツに向き直り、再び右腕の端子を【腕甲・万武】から外します。 「む、むむむむむ……!」 そして気合を入れます。 出来ると信じること。 そこにあると認識すること。 それを貫けば、空間の隔たりなど越えられる! 「むん!」 気合一閃、果たして――私は成功しました。 私の目の前で、思惑通りにずり、ずりと動き出す私の腕部パーツ。 「成功です! ハウリンタイプにプリインストールされた48の宴会芸の一つ、『ゾンビ・ハンド』です!」 本来ならば【プチマスィーンズ】に指令を伝える通信波を強制的に変調させ素体制御信号に似通った波長に調整し、それを送ることで取り外したパーツを遠隔的に動かす、【プチマスィーンズ】を標準装備するケモテック社MMSならではのこの技! もともと受信装置など存在していない上、本体バッテリーから切り離された状態での残留電圧によってのみの駆動のためその動きはほんの僅かでたどたどしいですが、そのつたない動きがかえって不気味さを演出するというのがポイントとread meに記載されたこの隠し芸『ゾンビ・ハンド』! 見事それを成功させた私は得意満面でマスターさんを振り返ります。 いやあ、すでに腕部パーツが取り外されていると言うのがまさに絶好のロケーションで、 ……って、あら? マスターさんひょっとしてドン引きでいらっしゃる? 「ドン引き、と言うわけでもないのですが……」 なにやらこめかみの辺りを揉み解すような仕草をしながら、マスターさんは静かに語ります。 「人間と武装神姫は、似た様なものに見えて、やはり越えられぬ溝と言うものはあるのですかねぇ、としみじみ考えていたところです」 「むむむ、なにやら寂しい結論です、マスターさん」 そんな私の背後で、停止信号が送られないために最初の命令に従ってずーりずーりと腕部パーツがのたうって行くのを聴覚センサーが認識しています。 「……ソレ、止めてもらえません?」 「あ、失礼しました」 私はずーりずーり動く腕部パーツを拾うと、外れたままになってる接続端子に接続しました。 また気合を入れて変調信号を送信するよりも、この方が早いのです。 むむむ、しかしなにやら雰囲気が、先ほどよりも一層微妙に。 ここは、ハウリン48の宴会芸の新技を公開すべきでしょうか? 「あー、あのですね犬子さん」 と、悩んでいた私に、マスターさんのほうからお声がかかりました。 頬を軽くかきつつ、なにやら言いにくそうです。 「先ほど、犬子さんは『寂しい結論』と仰いましたが……」 「お気に障ったら申し訳ありません、武装神姫はオーナーとの隔たりを感じると落ち込むものなのです」 膝を落とし似非正座の姿勢を取ってから、深々と擬似座礼を行なう私。おそらくマスターさんからは、丸まった私のドッグテイルはよく見えないと思われるのです。 「あー、いえ、こちらこそお気に障ったら申し訳ありません」 深々と座礼をするマスターさん。そして顔を上げたマスターさんは続けます。 「先ほどの発言ですが、別に拒絶する意図ではないのです。そうやってお互いの違いを正しく認識し、相互理解に努めることが互いをより良きパートナーへと昇華させていくのだと言うあたりで一つ」 「……さすがはマスターさん、キレイにまとめましたね」 ドッグテイル、再びぶんぶんと起動。 「ご理解いただけたら幸いです」 にっこりと笑ったマスターさんは、再び頭を垂れました。 「改めまして、これからよろしくお願いいたします犬子さん」 こちらも擬似座礼でお返しします。 「こちらこそ、至らぬ武装神姫ですが、どうぞよろしくお願いいたします」 顔を上げた私たちは、どちらからともなく笑顔を浮かべるのでした。 「ですがその…アレはもう、やらなくていいですからね?」 「……はい」 こうして私の隠し芸その1は、公開初回にして封印を余儀なくされたのでした、まる。 <そのさん> <そのご> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2115.html
ウサギのナミダ ACT 1-6 □ 翌週末。 俺は気が進まないながらも、いつものゲームセンターへと足を運んだ。 井山とかいう変態野郎がいるかと思うと行く気がそがれるのだが、先週の騒ぎの後で行かないのでは、こちらに後ろ暗いことがあるように思われてしまう。 ティアの恐がりようを思うと、さらに気が引けるのだが、それでも俺はやはり、いつも通りに行くべきだと思ったのだ。 そんなことを考えていたら、いつも行く時間より、一時間ほど遅くなってしまった。 俺はティアを連れて、ゲームセンターへと向かった。 いつものように、店内に入り、武装神姫のコーナーに足を向ける。 ……気のせいだろうか。 ざわついていた店内の空気が変化したように思えた。 バトルロンドコーナー特有の喧噪がなりを潜め、いきなり空気が重くなったような感じだ。 よく見れば、コーナーの誰もがバトルに熱中している風ではない。 みんな、隠れるような視線で……俺を見ていた。 眉をひそめる あの井山みたいな奴が来たからといって、こんな風に迎えられるいわれはないはずだ。 だが、武装神姫のプレイヤーの誰もが、何かやっかいなものを見たような視線で俺を見ている。 俺がどうしようかと迷って立ち止まっていると、店の奥から長身の男が現れた。 大城だ。 「大城、これはどういう……」 「遠野、悪いことは言わないから、しばらくここに来るのはやめておけ」 大城は、らしくない難しい顔をしながら、そう言った。 俺が来たときに言う言葉を決めていたかのように、はっきりと言い切った。 「なんで」 短い一言が硬い口調であったのを自覚する。 食い下がった俺に、大城は黙って一冊の薄い雑誌を差し出した。 週刊のゴシップ写真誌だ。 下世話な芸能ニュースを中心に、サブカル的な内容も扱う、はっきり言って低俗な雑誌だった。 大城から受け取った雑誌は、神姫のオーナーの間では有名だった。 神姫の記事が毎週載っているためだ。 その内容は真面目なものではなく、神姫のグラビアとか、有名神姫のゴシップとか、そう言うたぐいのもの。 俺は興味がなかったので、ほとんど目を通したことはない。 俺はその雑誌をパラパラとめくる。 雑誌の真ん中あたりに、袋とじページがあり、開封されていた。 その扉ページには、『衝撃! 淫乱神姫の過激プレイ、その中身』という、まったくひねりも何もないタイトルが、奇妙な字体で書き殴られていた。 ページをめくる。 「あっ……!」 俺の胸ポケットで、ティアが絶句するのと、俺の脳内にハンマーが振り降ろされたのは同時だった。 そのグラビアに写っているのは、ティアだった。 いや、グラビアなんかじゃない。 グラビアだったら、少なくとも被写体の美しさを表現しようとする姿勢が見て取れるはずだ。 そんな姿勢は欠片もない。 あらゆる方法で汚される神姫を、より扇情的な構図で撮影した写真、だった。 なんで……ティアの過去は海藤くらいしか知らないはずなのに。 なんで、この記事で『T県、T駅前のゲームセンター常連神姫・T』なんて伏せ字で名指しされてる!? しかも、ティアの画像には、目隠しされていない。 ティアを知る人が見れば、間違いなくティアだとわかる。 「……なんだよ、これは……」 「それはこっちのせりふだ。なんなんだよ、これは」 大城が厳しい表情で俺を見た。 「まさかお前、ティアにこんなことさせてるんじゃないだろうな?」 「するわけないだろう!!」 返す答えが大きな声になってしまったのも、仕方ないことだと思う。 冗談でも、俺がティアを慰みものにしているなどと、言ってほしくはない。 「だろうなぁ。お前がそんなことするタマとは思ってねぇよ。 だがな、疑問はある。 この写真はティア以外には見えねぇ。そして、いつ、誰がこの写真を撮ったのか?」 「……奴か」 「だろうな。だが、それが本当だとすると、井山が言っていたティアの過去も本当だということになる」 ……妙なところで鋭い奴だ。 大城の言うことは全くの正論で、否定の言葉も見あたらない。 俺は拳を握りしめる。 「……たとえそうだったとして、今のティアと何の関係がある?」 「関係はないかもしれねぇ。だけど、気持ちじゃ納得できねぇよ。 言っちゃぁ悪いが……神姫風俗は違法だぜ? 犯罪に関わった……しかも、こんな姿を公開された神姫とバトルしたいと思うか?」 「だからそれは……!」 俺の反論を、大城は右手を挙げて制した。 「わかってる、お前は下心あるような奴じゃないってことはよ……。 でも、考えてみろ。今ここでお前が意地を通してバトルしようとしたって、誰も応じてくれやしない。 それどころか心ないヤジや噂話に、つらい思いをするのはお前達だぞ?」 そう、わかっていた。 今この状況で、俺が意地を張ってバトルをしようとしても、応じてくれる対戦者などいないことを。 それでも、俺は納得できなかった。 俺達は何か悪いことをしたか? ただバトルロンドをプレイしようとすることが、悪いことかよ? 俺と出会う前のティアは、確かに違法行為をしていたのかも知れない。でも今は、素体も標準的なものに換装されて、俺の神姫として登録されている。 それに、ティア自身が何か悪いことをしたか? ティアに違法行為をさせたのは神姫風俗の経営者で、法に触れると知りながら彼女を汚したのは、井山みたいな連中じゃないのかよ? 俺はぶつけようのない不満を握りつぶすように、強く強く拳を握る。 何とか無理矢理、自分を納得させようとする。 それでも頭が沸騰して、言葉にならない。 つかの間、俺と大城の間に沈黙が流れた。 それを破ったのは、別の方からかけられた声だった。 「ああ、ああ、遠野くん! 困るんだよねぇ、ああいう人を連れてこられちゃあさぁ!」 「店長……」 俺を見つけた店長は、あわてて側までやって来て、そんなことを言った。 店長は二十代半ばくらいだろうか。小柄で童顔なので、実際は学生のように見える。 人がよく、いつもにこにこと笑っている人だ。 それが、今は迷惑そうな顔で俺を睨んでいる。 「ああいう人って……井山みたいな奴のことですか」 「ちがうちがう! 黒い背広の、いかにもそっちの人って感じの連中だよ!」 店長の話では、午前中に一度、三人組のダークスーツ姿の男達が来店したという。 そして店長にこの雑誌を見せながら「この神姫がバトルしに来ていないか?」とほとんど脅迫めいた口調で尋ねたのだ。 店長は、知らぬ存ぜぬで切り抜けたらしい。 店長にしてみれば、やっかいごとを避けたい一心だったようだが、俺達にとってはありがたい話だった。 男達は、この神姫が来たら教えてほしいと言って、去っていった。 おそらくこの男達は、神姫風俗「LOVEマスィーン」の関係者だろう。 俺がティアを見つけたときに会った男達と特徴が同じだ。 「すみません。ご迷惑をおかけして……」 「ほんとだよ……君も常連さんだから、言いたくはないけど、しばらく店に顔を出さないでくれよ。 僕の方は何も知らないってことにしておくから」 店としては最大の譲歩なのだろう。 俺達のことを話さないでいてくれるだけでも、よしとせねばなるまい。 あんな手合いがやってきたのは、俺達にも責任があると思う。 店長はブツブツと文句を言いながらも、最後は俺の肩をたたいて、去っていった。 こうなってしまっては、店に迷惑がかかってしまう。 認めたくはないし、納得は行かないが、ここは立ち去るしかない。 俺は大城に手を挙げて、きびすを返した。 ふと気付いて、声をかける。 「そういえば、今日は久住さんは来てないのか?」 「……あの記事を見て、すぐに帰ったよ」 「そうか……」 少し胸が痛む。 ティアの過去は、むやみに人に話したリする種類のものではない。 だが、久住さんや大城にも黙っていたことは、俺にも責任があると思う。 特に久住さんは女性だから、何も知らずにこんな写真を見せられればショックだったろう。 「すまないな、大城」 「……」 大城はらしくもなく口ごもる。 わかっていた。 俺に「店に来るな」という嫌な役目を、大城が自分からかって出たことくらいは。 友達だから、相手にとって嫌なことでも遠慮なく言う。 それはそれで奴らしい。 そう考える俺の頭はようやくに冷えて、一抹の寂しさが心の中に積もりつつあった。 俺は大城に背を向け、ゲーセンの出入り口をくぐった。 結局のところ、納得などしていない。 ただ、現実を認識し、俺が一歩引いて、意地を通すのをやめただけだ。 帰り道も、家に着いてからも、俺は考え続けている。 風俗にいた神姫を保護して、自分の神姫として登録し、バトルロンドに参戦した。 武装はオリジナルだが、違法パーツは使っていない。公式戦にもエントリーはしていない。 近場のゲームセンターで草バトルを繰り返した。 それだけだ。 俺は誰もだましていたわけじゃない。 だけど、ティアの過去が、神姫風俗というものへの認識が、どのようなものなのか思い知らされた。 神姫のオーナーであれば、パートナーとして大事にしている神姫を、性のはけ口として弄ぶその行為自体、受け入れられないだろう。 (お互い同意のもとのスキンシップならば、また別なのかも知れないが、俺にはよくわからない) その気持ちはわかる。 だが、もはや風俗の神姫ではないにもかかわらず、なぜティアは受け入れられない? 武装神姫としてバトルにいそしんでいる姿は、誰もが知っていることだというのに。 ティアの過去がどうあれ、俺以外の誰に迷惑がかかるというのだろう? ……いや、ゲーセンの店長には迷惑かけているか。 確かに、あの黒服連中が店に出入りするようになったら、店長にしてみれば大きな痛手だ。 それを理由に店に来なくなる客もいるかもしれない。 その点については、申し訳ないと思う。 俺達のことを黙っていてくれるという店長には、むしろ感謝しなくてはいけないだろう。 だが、直接の原因は俺達か? ティアが、風俗にいたことが悪いというのか。 俺は、断じて違う、と言いたい。 神姫はオーナーを選べない。そしてオーナーの命令は絶対だ。 風俗にいる神姫は、どんなに嫌でも、違法であっても、身体を売る以外に為すすべがないのだ。 ティアはもう何度も何度も傷ついた。 もう十分だろう。俺のもとにいて、同じように傷つく必要なんてない。 それでも、ティアは受け入れてもらえないのか。 風俗にいた神姫というだけで、この先ずっと認めてもらえないのか。 そこまでいくと、もう社会的通念の問題で、俺個人の力ではどうしようもないことだ。 それはわかっている。 頭では理解できている。 納得できていないのは、俺の感情だ。 為す術のない自分の力不足に、不満であり、怒っている。 やっとたどり着いた、武装神姫オーナーとしての道を突然閉ざされたことに怒っている。 俺達が今までしてきたことを、誰もが手のひら返したように否定する態度が、納得行かない。 けれど、頭でどんなに考えたところで、結局俺一人の力なんてたかがしれており、何をしたところで、問題解決にはならない、という結論に達する。 堂々巡りだ。 俺は額に手を当て、ため息をつく。 以前、海藤が言っていた言葉を思い出す。 「どんなに君が否定しても、神姫風俗とのつながりを疑われるよ」 ああ、そうだな、海藤。君の言うとおりだ。 俺は今、自分の無力さに打ちのめされている。 こんなどうしようもない状況に誰がした? 俺じゃない。久住さんや大城でもない。ゲーセンに集まる常連さん達や、店長でもない。 誰だよ、俺達をこんな状況に追い込んだ奴は。 俺の視線が、不意に机の上の神姫をとらえた。 クレイドルの上で膝を抱え縮こまっている。 ゲーセンであんなことがあってから、一言もはなさず、落ち込んでいる。 俺の神姫。 ティアが、顔を上げた。 視線が交差する。 ……俺はどんな顔をしていただろうか。 ティアの愛らしい顔が、みるみる恐怖に塗りつぶされていく。 ……なぜだ? なぜそんな顔をする? 「ティア」 「ひっ……!」 俺の呼びかけに、ティアは頭を抱え、ますます縮こまる。 「ご、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 まるで、壊れてしまった音声メディアのように。 謝罪の言葉を繰り返し繰り返し唱え続ける。 俺は。 俺はバカか。 俺は一瞬でも、ティアが元凶だ、などと疑ってしまったのか。 今回のことで、一番傷ついたのはティアのはずだというのに。 「違う……お前が謝ることなんてない」 絞り出すようにかすれた声。 ちゃんとしゃべったはずなのに、その声色には悔しさが滲んでいる。 「ちがうんだ」 言い聞かせるようにつぶやく。 誰に? きっと、ティアと自分自身に。 マスターとして自分の神姫を守れなかったふがいない自分に腹が立つ。 ティアにこんな顔をさせてばかりな自分が悔しい。 俺は前に言った。 ティアに、普通の神姫でいてもいいと、教えてやりたい、と。 俺が望む以外に、ティアが俺の神姫になる資格があるのか、と。 ……何様のつもりだ。 俺は、こうして怯え、傷ついているティアに、何一つしてやれていないじゃないか!! それで、一瞬でも、俺をこうして苦しめているのはティアじゃないか、なんて考えて。 俺の方こそ、ティアのオーナーでいる資格がない。 やり場のない怒りを鎮めるため、両の拳をきつくきつく握りしめた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/786.html
煌く粒子を撒き散らしながら、『ルシフェル』が天を舞う 空中戦に特化した『ウインダム』を、速度でも運動性でも装甲でも火力でも上回るその様は、決して単純に高級パーツを組み合わせただけではない 鶴畑興紀の調整能力の確かさと、的確な指示、地味だが効率的な『ルシフェル』自身の錬度も含めた、重厚で実のある強さだった 『ウインダム』自身は知らないが、「最強の武装神姫」を目指して敗北した神姫からデータを奪い、次なる『ルシフェル』に移植するという件の非情な行為迄含めて 隙の無さこそが鶴畑興紀と『ルシフェル』の強さの秘訣であった そしてその「取り付くしまも無い」感じが、『ルシフェル』自身のソリッドな印象と相俟って、かなりのファンの心を掴んでいるのも確かだった まさに今、ルシフェルに追いすがられている『ウインダム』自身がルシフェルのいちファンであり、彼女の機械的な振る舞いと言うのは、その実ミーハーなファンがアイドルのコスチュームを真似するのとなんら変わる所は無かった 鳳凰杯編 「幽鬼と魔王」 内心の動揺と高揚を表情に出さない程度には、ウインダムの『真似』は徹底していた それは、彼女より格下の神姫相手にとっては、次手が読めない不気味さと威圧感をもたらしもしたが、明らかに格上であり、しかもその模倣のオリジナルでもあるルシフェルからしてみればお笑い種を通り越して既に怒りすら禁じえないものであった (誰が好き好んでその様に振舞っていると・・・!?) 無論、口に出しもしなければ表情にも表しはしない その事で後々質問されるのも言い寄られるのも面倒だ ルシフェルは無駄と面倒を嫌う それは今迄破棄されてきた幾多のルシフェルに染み付いて来た鶴畑興紀の思想と言うよりは、『今、このルシフェル』となったストラーフの個性だった 例え内心でどう思っていようが、破棄されるよりは従順な僕であろうとする性質は、武装神姫らしいといえばらしいが、人間的といえば限りなく人間的でもある 故に、劣化コピーの存在を快く思わないのも止む無き事だった ごう!とまた一段と距離が詰まる。速度で勝り、バランスも悪くない以上、パーツ単位での性能ならば公式装備ばかりのウインダムより遥かに上なのは明白であった 今回のバトルに併せて、ルシフェルには地上戦装備は最低限しか装備されていない。そして、大柄な翼とゴツゴツした鞭状の武器、凶悪な爪を備えた「サバーカ」を装備した姿は、『ルシフェル』というよりは『サタン=アポカリプスドラゴン』を連想させるものだった サイドボード迄含めて、バトル毎に全て切り替えるのが鶴畑興紀の戦略であり、それらを全て使いこなして見せるのがルシフェルに求められる資質であった その戦略は『クイントス』と同様のものだが、パーツの質に於いて圧倒的に優秀であり、鶴畑興紀のパーツ選択のセンスも、流石はファーストランカーと言う他無かった 高速機動武装神姫にしか不可能なマニューバをいくつもこなしながら、二重螺旋状に上昇してゆく二体の神姫 だが、そのらせんは徐々に先細り、両者の距離が10smを切る頃には、ウインダムのSMGの弾丸も尽きていた 『頃合だな・・・仕掛けろ、ルシフェル』 命令と共に機銃を捨て、急接近して鞭を振るうルシフェル 急制動に回避が間に合わず、あえなく絡め取られるウインダム がきぃんっ!! 遅れて、片脚の爪がウインダムの細い腰を掴む この一瞬の格闘攻撃を確実にヒットさせる為に、速度を調整して追い抜かず、離されずの間合いを計ったのだ 『チェックメイトだ』 鞭とのバランス取りも兼ねて手首に装備されていた槍剣が、ウインダムの喉を貫いた 「いやいや、最近はサードやセカンドにも優秀な武装神姫が増えて来ていて、私も少し油断すれば危なかったかも知れないですね」 無数のカメラに囲まれながら謙遜を口にする興紀は、いつもの「貴公子」の顔だった この種の下級ランカーに対する激励リップサービスは彼のいつもの事でもあったし、「強さの求道者」として知られる場合の彼ともそうブレるものでもなかった 要するに、スターとしての資質を、彼は充分に備えているのだ 一通りのインタビューの合間に、ルシフェルと言葉を交わしたウインダムも、普段の「人形がましさ」を維持出来ずに、半ば舞い上がっているのが傍目にも明らかだった 当然、それよりもさらにこういった場に慣れない深町昭は尚更だった (馬鹿馬鹿しい) わざとらしい握手をかわすマスターふたりから目を逸らしたルシフェルは、その視界の隅に奇妙な男を見かけた 何故奇妙と感じたのか、その種の直感をあまり是としないルシフェルには、後々になるまでその理由は判らなかったが、兎角野心に満ち満ちた目をしている事だけは、その時点で既に判った 報道陣が去った後に、残されたその男が取り巻きをすり抜ける様に興紀に迫った時に、その表情にあった不敵な笑みが、興紀に媚を売るやからとは違う、一種の迫力を生み出すのに一役買っていた 「見事ですね、流石は鶴畑興紀と『ルシフェル』だ」 一瞬、興紀の顔に浮かんだ驚愕の色を、ルシフェルは見逃さなかった 「・・・馬鹿な・・・!?」 「お久し振りです。そちらも変わりなくご健勝のようで何より」 「貴様・・・性懲りも無くまだ生きていたか」 「おっしゃる意味が判りませんな、私は別に一度も死んだ事はありませんが?」 見つめ合う二人の男。その間にある緊張感を、ルシフェルはあまり愉快なものと取らなかった 「ご安心下さい。貴方がたが抜けられても、G計画は順調に進行していますよ・・・まぁ今声を掛けたのは偶然見かけたからであって、進捗状況を示すサンプルも何も持って来てはいませんがね」 「!!」 「今は皆川彰人という名で生活しております。貴方がたのご好意を持ちまして店のほうも順調ですよ」 「ではまたの機会に・・・」 「・・・亡霊め」 去ってゆく男の後姿を見送って、興紀は一言だけ漏らし、後は普段の「冷酷」な顔に戻った (亡霊・・・?) その言葉の響きに、ルシフェルはらしくないうすら寒さを感じていた 剣は紅い花の誇り 鳳凰杯・まとめページ